2017年12月26日付の『ロイター通信』は、中国環境保護省が北部地域の390万世帯で、「石炭からガス」などへの転換プロジェクトが完了し、目標としていた310万世帯を上回ったと報じた。ただ、多くの村では石炭から天然ガスや電気への転換が進んでいないとした。中国政府は17年から北部地域を対象に大気汚染対策プロジェクトに乗り出した。

一方、中国では深刻な天然ガス不足を招いているため、北京市は2017年12月半ば、石炭火力発電所の稼働を再開する措置を講じた。12月11日付の『ロイター通信』によると、ガス需給の現状を踏まえ、国家発展改革委員会から、中国華能集団にバックアップ用の石炭火力発電所の稼働を直ちに再開するよう要請したとの通達があったとする、『中国経済網』の報道を引用した。

大気汚染対策のため、中国華能集団の石炭火力発電所は17年3月に閉鎖に追い込まれていたが、北京市の要請で再稼働することになったという。環境対策を急ぐあまり、石炭から天然ガスへの切り替えを急ぐ中国政府の取り組みが裏目に出た格好だ。

ガス不足の背景には、習近平政権がエネルギー源の転換を促したことに起因するとの報道もある。地方政府が共産党指導部に自らの実績をアピールするため、計画を上回る転換を強いたことで、天然ガス不足に拍車がかかったようだ。中国政府は、事態の打開を図るため、ロシアから天然ガスを輸送するパイプライン建設を急ぐとの見方が出ている。

このほか、アジアインフラ投資銀行(AIIB)は2017年12月半ば、中国・北京で計画される天然ガスパイプライン建設などの事業に2億5,000万ドルを拠出すると発表した。石炭から天然ガスへの転換を急ぐ中国でのプロジェクトを後押しする。中国が主導するAIIBが、中国への融資を決めたのは、今回が初めてとなる。

サイト『CNS』によると、パイプラインは約510カ所の村落、21万世帯をカバーする。送ガス管の完工で、北京では毎年、石炭の使用を65万トン、二酸化炭素(CO2)の排出量59万5,700トンを削減できると見込む。パイプラインの全長は約3,700キロメートルで、完成は2021年を予定している。