エネルギービジネスにかかわる揉め事は世界各地で起きている。当事者同士の契約上のトラブルから事故処理をめぐっての賠償問題、開発事業に対する反対派運動まで幅広い。今回は、最近の事例を取り上げてみた。(写真はイメージ)
今年7月21日、欧州司法裁判所は、ポーランド政府がロシア国営ガスプロムを相手取って争っていた裁判で原告の訴えを退ける判断を示した。この訴訟は、ガスプロムが運営するオパル天然ガスパイプラインについて、同裁判所が2016年10月に同社のガス輸送量の制限撤廃を認めたことを不服としてポーランド政府が提起したものだ。裁判所は今回、制限撤廃によってポーランドが重大な損害を被ることを証明する証拠に欠けるとした。この司法判断で、ガスプロムは2019年までには制限撤廃が許可される見通しという。
一方、今年5月5日午前、米バレロ・エナジーがカリフォルニア州で運営するベニシア製油所が停電でシャットダウンし、フレア量が急増し、黒煙が発生する事故が起きた。周辺住民が避難するとともに、多くの人たちが病院に搬送されたという。この事故を受け、同州のベイエリア大気環境管理地区(BAAQMD)は、バレロに対し汚染被害を与えたとして罰金を科すと表明。バレロは自社に責任はなく、電力会社の過失としてPG&Eを相手取り、7,500万ドルの損害賠償訴訟を提起した。PG&Eは、同製油所に電力供給を誤って遮断したことを認めているという。
また、7月半ばには、米国労働安全衛生局(OSHA)が、製油所事故を起こした米エクソンモービルに対し、16万5,000ドルの罰金支払いを命じた。『ロイター通信』などの報道によると、2016年11月22日にルイジアナ州のバトンルージュ製油所でアルキレーション装置バルブの修理中に爆発事故が発生し、4人が重傷を負ったという。OSHAは、安全対策の不備を指摘。これに対し、エクソンモービル側は「納得がいかない」として異議を唱えているそうだ。
このほか、カナダのアルバータ州エネルギー規制当局(AER)は7月初旬、フォートマクマレーのロング・レイク油砂(オイルサンド)施設で、2015年7月に発生した加ネクソンのパイプラインからの油漏洩事故で同社に賠償請求すると発表した。この事故では、タールサンドと水の混合物約5,000キロリットルが流出し、2万1,900平方メートルの土地に影響を与えたという。ネクソンは自社調査で、パイプラインの設計が現場と適合せず、地中で折れ曲がり破損したことによるとした。ネクソンは中国海洋石油(CNOOC)の100%子会社である。