今回はイラクにおけるエネルギー事情を取り上げる。イラク中央政府がこのほど、クルド愛国同盟(PUK)とパイプライン輸送で合意したほか、クルド地域でロシアとの関係強化が目立っている。(写真はイラクの国旗)

イラク中央政府とPUKは3月、イラク北部のキルクーク油田で産出した原油をパイプラインでトルコに輸送することに合意した。輸送量は日量15万バレルとされる。双方はまた、キルクーク製油所の精製能力を日量ベースで1万バレル引き上げ、同4万バレルにすることでも一致したという。今回の合意によって、PUKによるパイプライン閉鎖が回避されることになる。PUKはこれまで、中央政府に対し、送油管を閉鎖すると警告していた。

また、3月31日付の『ロイター通信』などは、ロシア国営のロスネフチが、イラクのクルド地域で産出される原油を4月に初めて輸入すると伝えた。クルド産原油は、トルコのセイハン港からイタリア北東部のトリエステまでタンカー「ミネルバ・ソフィア」で輸送し、パイプラインでドイツにあるロスネフチの製油所まで送られるとしている。

一方、イラク石油省によると、国営石油販売公社(SOMO)と、ロシアのルクオイルがイラク産原油を販売する合弁企業(JV)の設立に合意した。4月3日付のサイト『アラブ・トゥディ』などによると、SOMOはイラク中央政府が支配する地域から原油輸出を行っており、今年3月時点の原油輸出量は約376万バレルという。

このほか、トルコのエネルギー開発会社のジェネル・エナジーは3月28日、イラク・クルド自治区内にあるタクタク油田の埋蔵量を下方修正したと発表するとともに、今年2月末までの累積(原油)生産量が2億790万バレル、2017年の原油生産量を180万バレルと見込むとした。今年に入り、ジェネルはイラクのクルド自治政府(KRG)とビナバウィ天然ガス鉱区における生産分与契約(PSC)と、天然ガスの積込み契約(GLA)の更新手続きを終えた。2013年に締結された天然ガス売買契約に基づき、クルド地域からトルコに供給される。