中東の小国であるレバノン共和国(首都:ベイルート、人口:約465万人)が、地中海沖合でのエネルギー資源をめぐる開発競争に本格参入する。レバノン政府はこのほど、海洋の石油・天然ガスにかかわる入札実施を決定した。欧米を中心とするエネルギー企業は今後、レバノン進出を急ぐとみられている。
レバノン政府は今年初め、予定より3年遅れていた1回目の海洋石油・天然ガスにかかわる開発権の入札を再開する方針を決めた。同国のミシェル・アウン大統領は年明け、エネルギー鉱区の振り分け、生産分与契約(PSC)の締結、入札手続きを規定する法令を承認したという。レバノン政府の動きに、米エクソンモービルやイタリア炭化水素公社(ENI)などが早くも入札の意向を示しているという。
1月5日付のサイト『オイル&ガス・ピープル』などは、石油・天然ガス開発によって得られる収入をマネージメントするための国富ファンド(基金)を設立する方向で調整していると報じた。米エネルギー情報局(EIA)によると、レバノンには天然ガス96兆立方フィート、原油8億5,000万バレルが埋蔵されているという。
レバノン国内には18の宗派が存在し、各宗派に政治権力の配分がなされてきた。他方、イスラム教シーア派のヒズボラなど親シリア勢力と、イスラム教スンニ派グループなど反シリア派が対立し、これまで政治的な緊張を繰り返してきたのも事実だ。
昨年10月31日、レバノンでは大統領選出のための特別国会が召集され、出席した議員127人による投票の結果、アウン前自由愛国運動(FPM)党首が第13代レバノン大統領に選出された。日本の外務省によると、この特別国会には国会議員に加え、現職閣僚、国軍・治安機関幹部らが同席・傍聴したという。レバノンの大統領職は、2014年5月のスレイマン前大統領職の任期満了以降,各派の調整が難航し、空席となっていた。
ところで、地中海では、イスラエル沖合の大規模な天然ガス田での生産活動が始まったほか、エジプトが天然ガスの輸出に転じるとの見方も出ている。調査会社ウッド・マッケンジーはこのほど、天然ガスの減産で純輸出国から純輸入国に転じて約5年が経過したエジプトは、2019年には再び輸出余力が生じるとの予測を発表した。