トルクメニスタン政府が、イランが過去の天然ガス代金を支払わないとして同国へのガス輸出に制限をかける措置に出た。これに対し、イランも一歩も引かない構えを見せている。

年明け早々、トルクメニスタンのラシッド・メレドフ副首相兼外相は、イランが過去の天然ガス代金を滞納していたとして、同国に対するガス輸出に制限をかけたと表明した。トルクメニスタンは、年間約90億立方メートルの天然ガスをイランに輸出しているが、2013年以降、イラン国営ガス会社のNIGCから返済が滞っているとした。サイト『KUNA』が報じた。

これに対し、NIGCはトルクメニスタン政府の措置は両国間の協定に反すると非難。NIGCはすでに約45億ドルを返済済みと主張した上で、企業間の問題にトルクメニスタン政府が介入しないよう促したという。

両国間には、トルクメニスタン西部のコペルゼとイラン北部のクルト・クイをつなぐ天然ガス・パイプライン(総延長約200キロメートル)が通っている。1997年12月、トルクメニスタンからイランへ輸出が開始され、ロシアを経由しないトルクメニスタン初となる海外への独自輸出ルートとして注目された。

米エネルギー情報局(EIA)によると、イランの核開発をめぐる問題で同国が欧米諸国から経済制裁下にあった2012年、イランは天然ガスをパイプライン経由で92億立方メートルを輸出する一方、53億立方メートルを輸入した。イランは天然ガスの埋蔵量で世界第1位だが、冬場の暖房用として天然ガスを輸入している。イランは同年、輸入した天然ガスの9割以上がトルクメニスタンから受け入れたものの、経済制裁に同調していたトルクメニスタンからの輸入量が大幅に減ったため、輸入量の合計は2011年と比べ約50%減少したという。

現時点で、トルクメニスタンが天然ガス供給を全面的に停止する事態に発展するのかは予測しにくい。懸念材料として挙げられるのが、ドナルド・トランプ米大統領の言動だ。同氏はこれまで、イラン核合意の破棄を表明してきた。これを実行に移せば、イランは態度を硬化させ、核開発を再び加速させるかもしれない。そうなれば、イランは経済制裁前の状況に後戻りせざるを得ない。結果的に、トルクメニスタンへのガス代金支払いに支障を来たす事態を招く。両国はもちろんのこと、今後のトランプ米大統領の発言にも注意を払わなければならないだろう。