中国政府は、独立系石油会社に対する脱税行為の取り締まりを強化する。一方、中国における軽油やガソリンなど石油製品の輸出量が増加傾向にある。背景には、国営石油企業の国内シェアに独立系石油会社の進出があり、余剰分が輸出に振り向けられているとの見方が広がっている。

2015年2月、中国政府は小規模の石油精製会社に原油輸入を許可した。これを契機に、国内には独立系石油会社が次々と誕生。一方、急成長を背景に、脱税行為が横行し始めているとの指摘もあり、中国政府はこのほど、独立系石油会社を対象とする脱税取り締まりの強化に乗り出すことになったようだ。8月23日付の『ロイター通信』は、国家発展改革委員会(NDRC)は、脱税行為が明らかとなった場合、原油輸入を最大で1年間禁止する措置を講ずるという。悪質な場合、原油輸入資格をはく奪することもあるとしている。政府はこのほか、原油輸入の資格のない事業者が転売している可能性もあるとみて実態の把握に乗り出したようだ。

独立系石油会社の急成長にともない、中国における石油製品の輸出量が増加傾向にある。8月21日付の『ブルームバーグ・ニュース』によると、7月には、軽油、ガソリン、ジェット燃料の輸出量が急増したという。軽油輸出量は前年同月比181%増の153万トン、ガソリンは同145%増の97万トン、ジェット燃料は同46%増の109万トンだった。国営石油の国内シェアに独立系石油会社が進出したことによって、余剰分が輸出に振り向けられたとの指摘が出ている。

一方、独立系石油会社の進出に国営石油企業は経営の足元を揺さぶられている。国営大手がこのほど発表した業績は低迷ぶりが顕著となった。中国海洋石油(CNOOC)の2016年上半期は77億元(約1,160億円)の純損失となった。前年同期は147億元の純利益だった。一方、ペトロチャイナは8月24日、2016年上半期の純利益は前年同期比98%減の5億3,100万元、売上高が同15.8%減の7,391億元だったと発表した。CNOOC、ペトロチャイナとも原油安が減益要因としている。

今般、独立系石油会社の脱税取り締まりを強化する背景に、大手国営石油企業の危機感があった。国営石油企業の取り締まり強化の申し出を中国政府が受け入れざるを得なかったようだ。