カナダでは現在、再生可能エネルギー開発に政府と企業が一丸となって取り組んでいる。とりわけ、バイオ計画に力点を置き、連邦政府のほか、州単位でも研究・開発を助成する動きが出ている。
アルバータ州のアルバータ・イノベーツ・バイオ・ソリューションズ(Al Bio)は今夏、バイオプロジェクト計61件に対し、1,300万カナダドルを助成すると発表した。対象となるのは、林業や農業などの副産物のバイオマスを利用する新製品や技術に関するもので、将来的にセルロース(繊維素)ナノ・クリスタル(CNC)を工業・医療分野に応用することにつなげるという。CNCとは繊維素を超微細化したCNF(ナノ・ファイバー)を酸加水分解して製造したものを指す。61件のうち、25件はAl Bio以外に産業界全体からも助成を受ける見通しとしている。
アルバータ州のAl Bioによる助成に関しては、カナダのフォージ・ハイドロカーボンズがAl Bioから50万カナダドルの助成を獲得したという。同社は、Lipid(脂質)からハイドロカーボン(炭化水素)をつくるプロセスのパイロットプラント(200キロリットル/年)のプロジェクトに助成金と合わせ、計126万カナダドルを使う見通しだ。プラントは同州エドモントンのアルバータ大学に設置され、原料として獣脂や牛脂、植物油、調理後の廃油を使用する。
ところで、原油価格の下落を受けて、世界では化石燃料にかかわる開発投資が停滞ぎみである。産油国のカナダも例外でなく、同国政府はバイオマスなどの再生可能エネルギーの開発・研究に注力する。非営利団体である「カナダ水素・燃料電池協会」(CHFCA)のエグゼクティプ・ディレクター、カロリン・ベイリー氏(=写真)は「連邦政府のトルドー政権も化石燃料から再生可能エネルギーのシフトを後押ししている」と指摘。CHFCAは、カナダ政府と連携し、企業との関係を取り持つことで、ビジネスを円滑に進めさせる目的で設立された。
連邦政府は、再生可能エネルギーの導入によって年間370億ドル分に相当する燃料費の節約につながると試算する。アルバータ州政府はオイルサンド(油砂)開発を長期的な投資と位置付ける一方、再生可能エネルギー開発へ軸足をシフトしつつある。また、ケベック州では、バイオ燃料などの研究に4億6,000万ドルを投資する予定で、2016~2025年の「新エネルギー政策」を今年の年末までにまとめ、それを公表する予定だ。