サウジアラビア政府は今年4月下旬、原油の依存度を低下させ、世界的な投資国家へ転換を図る経済分野での大改革に乗り出す方針を表明した。石油国家『サウジ』の今後の動向に注目が集まる一方、国営石油会社の積極的なビジネス展開が目立っている。
サウジアラビアの今年第1四半期の経済成長率は過去3年間で最低となり、通年ベースでゼロ成長に陥ると予測するアナリストも少なくない。昨年12月に財政赤字が約1,000億ドルに達し、エネルギー分野での補助金削減を実施するなど、政府支出の削減が喫緊の課題となっている。
こうした状況下、サウジアラビアのファリハ・エネルギー相は7月、原油の低価格政策を継続する意向であることを表明した。原油価格の上昇を目的とする減産には応じないとの姿勢を内外に示した。経済構造の大改革を掲げたサウジアラビアのムハンマド・ビン・サルマン副皇太子は、これを実行し、原油に依存しない経済体質を確固たるものにするため、4兆ドルの投資をすると発言している。
他方、国営電力会社のサウジ・エレクトリシティ(SEC)は6月末、中国工商銀行(ICBC)から15億ドルの融資を受けた。6月30日付の『新華社』によると、返済期限は5年とし、資金をSECの投資プロジェクトに充てるという。中国側は、サウジアラビアへの融資を行うことで関係強化につながると判断したようだ。
中国による中東地域への進出は、サウジアラビア1国にとどまらない。今年1月、中国政府と湾岸協力会議(GCC)諸国は、2016年中に自由貿易協定(FTA)の締結を目指すとした。中国による中東地域との包括的な経済関係の強化が垣間見える。
ちなみに、GCCは1981年にアブダビで設立。本部をサウジアラビアのリヤドに置く。GCCは、アラブ首長国連邦(UAE)、バーレーン、クウェート、オマーン、カタール、サウジアラビアの6カ国で構成される。