炭層メタン(CBM)をめぐる世界の動きが注目されている。ポーランドでは、国営ガス大手が地質調査所とコンソーシアムを形成し、今秋にもCBMにかかわる初の掘削試験を実施する予定だ。一方、香港では、炭層メタンに関連し、中国政府が2015年に大手企業に対し120万ドルの補助金を交付したことが判明した。

ポーランド国営のガス大手であるPGNiG(写真は本社ビル=同社のHPから引用)は7月1日、ポーランド地質調査所(PIG-PIB)と共同で炭層メタン生産にかかわる開発方法に向けた取り組みを開始したと発表した。炭層メタン開発にかかわる同国初となる掘削試験は、PGNiGとPIG-PIBがコンソーシアムを立ち上げた後、ギロビツェのアッパー・シレジア石炭盆地で今秋にもスタートする予定だ。PGNiGは、シェールガス開発で培った水圧破砕工法(フラクチャリング)の手法を炭酸メタンの開発で活用するとしている。

ポーランドではこれまで、シェールガス開発に向けた事業に注力してきたが、いずれも商業ベースに乗る水準に届かず、同国に進出した外資系企業が悉く撤退した。ポーランド政府は、シェールに代わる有望エネルギー源として炭層メタンに注目したようだ。

一方、中国では炭層メタンの販売に関連し、香港を本拠地とする中国油気控股有限公司(SOG)がこのほど、2015年に中国政府から交付された補助金が120万ドルになったことを明らかにした。7月10日にSOGが公表したプレス・リリースによると、中国政府は今年3月、炭層ガス生産の補助金を2020年まで1立方メートルあたり0.2元から0.3元に引き上げたという。

中国政府が補助金の交付に乗り出した理由として、シェール開発が想定したほど進まなかった状況を打破するため、非在来型の燃料開発で炭層メタンに目を付けたことが挙げられる。また、天然ガス価格が大きく下落する局面で、ガス生産者の保護を目的にしているとの見方も出ている。

非在来型の天然ガスは、頁岩に貯留するガスのシェールガス、砂岩層に貯留するガスのタイトガス、石炭層の隙間に吸着する炭層メタン(CBM)などに分類される。中国工学アカデミーによると、中国はタイトガス生産量を2020年までに800億立方メートルと見込む。タイトガスに加え、今後、炭層ガスの開発や生産にも注力していくと見られている。