サウジアラビアが4月末、「脱石油依存」に方針転換することを示した。国営石油会社サウジアラムコの株式を新規上場することを明らかにした。時価総額で2兆ドルを超すとされるアラムコは、上場後の利益を非石油部門に充てるようだ。他方、同国は今後、再生可能エネルギーにおける発電能力を増強する目標を掲げるなど、石油開発をベースにしつつも、化石燃料だけに依存しない産業構造の変革に一歩踏み出した。
5月16日付のサイト『サウジ・ガゼット』などによると、サウジは、再生可能エネルギーでの発電能力を2022年までに9.5ギガワット(GW)、さらに2040年までに54GWにまで引き上げる目標を掲げた。
また、5月初旬にはナフサの代わりに原油から石油製品を製造する「原油から石油製品へ」計画をサウジアラムコと石油化学大手のSABICとが共同で推進する覚書(MOU)を締結した事実が判明。5月10日付のサイト『ハイドロカーボン・プロセッシング』などが報じた。それによると、投資額は300億ドルで、アラムコの精製技術とSABICの石化技術を合わせることで、計画実現が可能になるとした。この報道によって、将来の事業統合を意味するとの観測が広がったが、両社は5月21日、「石油化学事業を統合する考えはない」とする共同声明を発表した。
一方、米ゼネラル・エレクトリック(GE)は5月23日、サウジに14億ドルを投資すると発表した。GEはまず、サウジアラムコと組み、エネルギー・海洋開発関連の工場を立ち上げるという。
ところで、「脱石油依存」を表明したとは言え、サウジが石油輸出国機構(OPEC)の盟主である立場に変わりない。同国政府は5月7日、大胆な省庁再編を発表。エネルギー分野では、「石油鉱物資源省」を「エネルギー産業鉱物資源省」に改称するとともに、石油政策を20年にわたり主導してきたヌアイミ石油鉱物資源相を退任させ、後任にファリハ保健相(国営サウジアラムコ会長)を起用した。
サウジの経済政策を統括するムハンマド副皇太子の側近とされるファリハ氏の大臣就任は、サウジが今後も原油市場のシェア維持・拡大路線に変更がないことを内外に印象付けた。原油を中心とした化石燃料の依存体質を減らしつつ、再生可能エネルギー分野などへの投資を進めるなど、今後のエネルギー開発事業でのバランスをいかにとるか、市場関係者の注目が集まる。