5月26日、ニューヨーク先物市場の日中取引で、WTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)原油価格が一時、節目とされる1バレル50ドルを突破した。その後、買い材料に欠ける一方、6月2日にウィーンで開催される石油輸出国機構(OPEC)総会で、加盟国が増産凍結で合意する可能性が残されているため、積極的に売りにくい状況にもある。OPEC総会の見通しについて、資源・食糧問題研究所の柴田明夫代表(=写真=)に聞いた。
経済制裁が解除されたイランはこれまで、原油生産量の回復を目指し、増産を続けてきた。その結果、4月の生産量は日量360万バレル程度まで回復。5月は日量400万バレルになる見通しが出ている。こうした状況下、柴田氏は「イランが増産凍結に合意する素地はできている」と指摘。ただ、OPEC総会で「増産凍結という動きになるか非常に疑問」と付け加えた。サウジアラビアが増産凍結の措置に応じない可能性が大きいとみるためだ。
4月に開催されたOPECとロシアなど非OPECとの会合で、イランを抜きにした増産凍結に反対の意を強硬に示したのが、サウジのムハンマド副皇太子だった。サウジは経済政策の最高機関である経済開発評議会が先に発表した「ビジョン2030」で、2030年までに「脱石油依存」の経済構造を目指す計画を明らかにした。サウジは、国家財政の7割を石油収入で賄うこれまでの経済構造を改め、石油に依存しなくても国家財政が成り立つ方向に舵を切るようだ。手始めに、国営石油会社サウジアラムコの株式の5%を新規株式公開(IPO)で売却し、得た資金を投資に回す方針を打ち出した。
サウジの動きに対して、柴田氏は「原油価格の低迷を前提とした計画を立てている。原油価格を現行水準以上に上げるために増産を凍結するという発想はない」と指摘する。こうした分析を踏まえ、柴田氏は「OPEC総会は不調に終わる可能性が大きい」との認識を示した。