ミャンマーでは2016年3月30日、ティン・チョー氏が新大統領に就任した。選挙で国民の支持を得た政権が発足したのは、実に55年ぶりとなった。民主化運動の立役者であるアウン・サン・スー・チー氏が、外相と大統領府相、新設の国家顧問に就任するなど、新政権の本格的なスタートで、民主化が今後、一層進むと国内外から期待される。こうした中、エネルギー分野では、中国企業のミャンマーへの食い込みが報じられている。
ミャンマー政府は4月初め、中国国営の資源商社である広東振戎能源(GDZR)に製油所の建設を認可した。精製能力は日量10万バレルで、建設地はミャンマー南東部の港湾都市であるダウェー。プロジェクト全体の総費用は30億ドルで、製油所のほか、油槽所などもつくられる予定だ。出資比率はGDZRが70%、残りはミャンマー・エコノミック・ホールディングス(UMEHL)など3社。現在、ミャンマーは燃料の大部分を輸入に依存している。今回のプロジェクトは、ミャンマーにとって初の大規模製油所の建設となる見通しだ。
今回、注目を集めるのは、製油所の建設のほか、中国がダウェーに進出することになったことだ。ここは、ミャンマーとタイ両政府が国家プロジェクトとして経済特区の開発事業を担っていたが、総事業費が多額のため、日本企業も参画することになった。今後、ダウェー地区の開発事業で、中国企業との開発競争が激化するとの見方も出ている。
外務省は3日、ミャンマーを訪問した岸田文雄外相が、国家顧問兼外相のアウン・サン・スー・チー氏とネピドーで会談したと発表した。日本政府として、ミャンマー政府が重視する雇用創出、農業、保健などの分野で協力プログラムを策定し、全面的に協力していく考えを表明した。また、「日メコン連結性イニシアティブ」の下、インフラ整備に加え、制度改善や人材育成などを通じて連結性の強化に貢献すると伝えたとしている。(写真は岸田外相=左=とスー・チー氏、外務省HPから引用)
ところで、ミャンマーから撤退する企業の動きもみられる。米シェブロンはこのほど、ミャンマーに保有する天然ガス関連資産を全て売却することを決めたという。4月18日付のサイト『インターナショナル・ビジネス・タイムズ』が報じた。原油安が続く中、シェブロンは非中核資産の売却に沿った方針としている。
報道によると、総売却額は13億ドル。シェブロンは、ラカイン海盆ブロックA5区の権益99%と、ヤダナ・セイン天然ガス田の権益28%超を保有する。2015年の天然ガス生産量は1億1,700万立方フィートだった。ラカイン鉱区はアンダマン海に位置し、タイ国内の発電所向けのほか、ミャンマー国内にガスが供給されている。ヤダナ・セイン天然ガス田は、豪ウッドサイド・ペトロリアムが発見した。