イラク北部のクルド人自治区で9月末に実施された、イラク中央政府からの独立の是非を問う住民投票で、賛成派が圧倒的な得票数を獲得した。こうした状況下、エネルギー分野における同自治区でのイラク中央政府の介入の動きが目立っている。

イラク中央政府のルアイビ石油相は10月10日、主要な油田があるキルクークからクルド地域を迂回して原油を輸送するパイプラインの修復・再開を指示した。同日付のサイト『abcニュース』などによると、迂回パイプラインは、2014年にイスラム過激派組織「IS」の攻撃で停止を余儀なくされてきた。

ルアイビ石油相はまた、クルド自治政府が掌握していたキルクーク地区に製油所を新設する計画を明らかにした。10月17日付のサイト『RT』などによると、イラク中央政府はキルクーク地域の原油生産量を日量100万バレル以上にすることを検討するとともに、クルド自治政府に対し、原油輸出パイプラインの稼働停止を求めているという。

このほか、『イラク・エコノミック・センター』(10月9日付)は、ルアイビ石油相が、イラク南部の原油増産を図るため、数十億ドル規模のプロジェクトを実施することで、米エクソンモービルとの交渉が大詰めを迎えていると伝えた。

ところで、『ロイター通信』は10月下旬、ロシア国営ロスネフチがイラク北部のクルド人自治区の主要な石油パイプラインの経営権を掌握することに合意したと報じた。同自治区でのパイプライン・プロジェクトについて、最大で60%の権益を握る可能性があるという。ロスネフチの投資総額は18億ドルに上るとされる。

(注)エネルギー分野におけるロスネフチによるクルド人自治区への進出については、本サイト「エネルギーコンフィデンシャル」(2017年10月2日付)「クルド自治政府が独立を問う住民投票を強行―直前にロシアがクルド地域で予定する天然ガス・パイプライン建設計画を表明、その狙いとは?」で取り上げているので、参照してください。