ロシア国営石油会社のロスネフチが北極圏をはじめとするエネルギー開発事業を加速させている。また、シンガポールにトレーディングオフィスを開設する意向を示すなど、開発や生産活動に加え、トレーディングの各分野で事業拡大の動きをみせている。
ロスネフチは6月18日、東シベリア・クラスノヤルスク地方北部のラプテフ海での試験的な掘削で油田を発見したと発表した。2015年11月に開発権を取得したロスネフチは今年4月初旬から試掘を開始していたという。同社は2012年以降、北極圏におけるエネルギー開発に約1,000億ルーブル(17億4,000万ドル)を投資し、今後、2021年までに43億ドル超を投資する計画としている。
北極圏でのエネルギー開発については、6月14日付の『ロイター通信』が、ロスネフチとパートナー企業(企業名は明らかにしていない)が今後5年間で新鉱区の開発に4,800億ルーブル(約84億ドル)を投資する計画であると報じた。2014年のウクライナ危機をきっかけとして、欧米諸国による対ロシア経済制裁で現在、北極圏やシェール油田開発に西側企業の参加が止められている。
ロスネフチは6月21日、印エッサール・オイルの買収手続きが完了したと発表した。また、インドでの事業展開について、同国のプラダン石油相は、ロスネフチがインドの燃料小売り事業に進出する計画があるとの見方を示した。エッサール・オイルの買収はインド進出の足がかりとみられている。
このほか、ロスネフチのイーゴリ・セチン社長が6月末、シンガポールにトレーディングオフィスを開設する意向を明らかにした。サイト『オイル&ガスイヤー』(6月27日付)などによると、エネルギー開発や生産活動、トレーディングの各分野で事業拡大の動きを示している。6月初旬には、イラクのクルド自治政府(KRG)との間で、協力関係の強化で合意し、石油・天然ガス5鉱区の生産分与契約(PSA)に調印した。クルド地域の可採埋蔵量は、原油で450億バレル、天然ガスで5兆6,600万立方メートルとされる。
ところで、6月27日にロシアとウクライナをターゲットにしたウイルス「ワナクライ(WannaCry)」によるサイバー攻撃は、その後、欧州や米国、南米と世界的な広がりを見せた。ロシアではロスネフチが被害を受けた。ロスネフチは同日、生産プロセスの管理体制をバックアップシステムに切り替えたと発表した。