今回は、南米アルゼンチンにおけるシェール埋蔵層の開発動向について取り上げる。2015年末に誕生したマクリ政権によるエネルギー分野での規制緩和で、海外勢がシェール開発事業に参入するケースが目立っているようだ。

アルゼンチン国営YPFと油田サービス大手のシュルンベルジェは今年4月半ば、アルゼンチン・ネウケン州のヴァカ・ムエルタ・シェール埋蔵層でこれまでに投資した総額が3億9,000万ドルに達したと発表した。今後、シュルンベルジェの子会社がバンドゥーリャ・スル鉱区の権益49%を取得する見通しで、YPFと共同試掘作業に取り組むという。海外企業に課してきた規制をマクリ大統領が撤廃したことで、ヴァカ・ムエルタ・シェール開発の事業環境が改善したという。規制撤廃が外資参入に弾みを付けているようだ。

『ロイター通信』などによると、YPF、英BPの子会社であるパン・アメリカン・エナジー、仏トタルのアルゼンチン子会社であるトタル・アウストラル、ドイツの石油・天然ガス企業であるヴィンターシャールの4社が3月末、ヴァカ・ムエルタ・シェール埋蔵層の開発事業に5億ドルを投資する計画を規制当局に申請したという。YPFは、ヴァカ・ムエルタ関連で保有する権益の一部を売却し、投資資金をねん出する見込みだ。

一方、英蘭系ロイヤル・ダッチ・シェルがアルゼンチン国内で運営する製油所と燃料小売網の資産買収をYPFが検討していると、4月11日付のサイト『EMIS』が報じた。買収資産にはブエノスアイレス製油所(精製能力は日量11万3,000バレル)と、アルゼンチン国内で13%のシェアを占める630の給油所が含まれるとしている。シェルは今後、同国内での石油・天然ガス開発事業は継続する。

ところで、シェルは4月18日、ヴァカ・ムエルタ・シェール埋蔵層で、シェールガス処理プラントの開所式を実施した。プラントは、同埋蔵層のシエラ・ブランカなど3鉱区に建設された。シェール由来の天然ガスを日量1万バレル(原油換算)処理することが可能という。シェルは昨年9月、アルゼンチンでの探査・石油精製事業などに2020年までに年間3億ドルを投資する計画を表明済みだ。