原油の国内需要の8割を海外に依存するインドには現在、国内3カ所に戦略原油備蓄(SPR)の地下施設が建設され、タンクを満たす原油の確保に動いている。インドのSPR事情や石油業界の再編の動きについては、本サイト「エネルギーコンフィデンシャル」(2017年2月16付)で取り上げたが、新たな動きが出てきたため、その情報を追加した。
インド政府は3月初旬、同国の原油戦略備蓄機関(ISPRL)とアブダビ国営石油会社(ADNOC)との間で原油備蓄にかかわる契約を承認した。契約内容によると、ADNOCは原油81万トン(586万バレル)相当をインドのカルナータカ州マンガロールにあるISPRLの原油貯蔵施設に提供するとしている。
国際エネルギー機関(IEA)は、2030年までにインドの原油需要量が年間ベースで3億2,900万トンに増加すると予測。また、米エネルギー情報局(EIA)によると、インドの原油総備蓄量は3,910万バレル。2015年の国内消費量から生産量を差し引いた数量ベースで、輸入量の13日分に相当するという。インド政府は、最終的に90日分相当の原油備蓄量の確保を目指す。
一方、インド国内の石油業界の再編劇について、具体的な動きが出始めた。インド国営石油ガス会社(ONGC)は、同国政府が推し進める国営石油企業の統合計画の一環として、精製大手のヒンダスタン石油を傘下に収める方向で検討している。インド政府が保有するHPCLの株式5.11%をONGCに移し、持ち株会社化する方向で検討している。『エコノミック・タイムズ』などによると、インド政府は、国営石油会社の統合が、海外における資産獲得の上で石油メジャーに対する競争力を向上させると主張している。
インドのアルン・ジャイトリー財務相は今年2月初旬、国内の国営石油12社を統合し、米エクソンモービルや英蘭系ロイヤル・ダッチ・シェルに匹敵するような「巨大国営石油会社の設立を計画している」と強調した。この構想が実現すれば、市場価値で米シェブロンを凌ぎ、英BPと肩を並べる規模のインド版「石油メジャー」が誕生することになる。