トルコのエネルギー開発企業であるジェネル・エナジーは2月中旬、イラクのクルド自治政府(KRG)とビナバウィ天然ガス鉱区における生産分与契約(PSC)と、天然ガスの積込み契約(GLA)の更新手続きを終えた。2013年に締結された天然ガス売買契約に基づき、クルド地域からトルコに供給される。ジェネル・エナジーは2015年9月、オーストリアのOMVからビナバウィ鉱区の権益36%を取得した。

一方、米エネルギー情報局(EIA)は2月初旬、トルコの国別レポートを更新し、その内容を公表した。EIAによると、トルコは、ロシア・中央アジア・中東から欧州や大西洋市場への石油・天然ガス輸送の中継地として重要性を増していると指摘。原油確認埋蔵量は、3億1,200万バレル(2016年1月現在)。15年の原油類(原油・コンデンセートなど)の生産量は日量6万2,000バレルで、国内石油消費量は日量86万バレル。15年の原油の輸入先は、イラクとイランで、全輸入量の約6割を占めた。国内6カ所にある製油所の総精製能力は日量66万3,000バレル(16年1月現在)。トルコにおける天然ガスの確認埋蔵量は1,770億立方フィート(2016年1月現在)。15年の天然ガス生産量は140億立方フィートに対し、消費量は1兆7,000億立方フィートだった。ロシアからの天然ガス輸入が全消費量の56%を占めた。

ところで、トルコのエルドアン大統領とチャブシオール外相の発言をめぐり、同国とイランとの関係がぎくしゃくし始めている。イランが中東地域を不安定にしていると非難したことで、イランはこのほど、駐テヘランのトルコ大使を呼び、厳重に抗議した。とりわけ、チャブシオール外相が2月19日、ドイツのミュンヘンで開催された安全保障会議で「イランがシリアとイラクを(イスラム教の)シーア派にしようとしている」(トルコ国営アナドル通信)との発言に不快感を示したようだ。

シリア内戦をめぐり、イスラム教シーア派が主流のイランは(シリアの)アサド政権を支持。一方、スンニ派が主流のトルコは反体制派を軍事支援している。これに加え、イラクでは、シーア派民兵組織「PMF」が、トルコの軍事介入を非難するなど、対立が目立っている。PMFはイランで訓練を受けた非正規軍だ。トルコとイランの関係は一昨年来、ロシアが介在することでバランスを保ってきたが、ここにきて、それが大きく崩れる可能性も出てきた。