「原油安ショック」シリーズの第52弾。原油価格の回復基調でエネルギー産業全体に明るい兆しが見える中、シンガポールやスイスの企業がこのほど、人員削減を実施し、事業規模の縮小と債務削減などに取り組む情報が伝わっている。

海洋における掘削装置(リグ)建設を手がけるシンガポールのケッペル・コーポレーションは今年1月末、2016年に海洋事業部門の人員1万600人を削減したと発表した。削減数は、全従業員の35%にあたる。内訳をみると、シンガポール国内で3,800人、国外で6,800人。人員整理の実施で、1億5,000万シンガポールドル相当のコスト削減につながったとしている。

一方、スイスの油田サービス会社であるウェザーフォード・インターナショナルは、原油安で膨れ上がった債務を削減するため、3,000人の人員削減を実施している。1月中に約2,000人の整理を実施済みで、さらに1,000人の追加削減を実施する。また、米国でのフラクチャリング(水圧破砕工法)事業と、中東地域での掘削事業の売却を計画しているという。ウェザーフォードは、2014年から人員削減を進め、6万7,000人いた従業員は現在、3万人を下回る水準まで落ち込んでいるという。

本サイト「エネルギーフロントライン」(2017年1月18日付)で取り上げたように、英自動車メーカーのロールス・ロイスが、海洋事業部門で800人の追加人員削減を今夏までに計画している。海洋事業部門では、同社の顧客の約6割が石油・天然ガス関連企業という。ロールス・ロイスは、人員削減によるコスト削減効果を年間4,500万~5,000万ポンドと見込む。海洋事業部門には現在、約4,800人が在籍する。

ところで、中国国家発展改革委員会(NDRC)は1月17日、2016~2020年の5カ年計画で、2020年の原油生産量を前計画(2011~2015年)に比べ、7%減の2億トン(日量400万バレル)にする計画を発表した。数年に及ぶ原油安の状況下、成熟油田や高コスト油田で減産する方針だ。一方、天然ガス生産量について、NDRCは20年までに2,200億立方メートル(前計画は1,340億立方メートル)に増加するとしている。