水素燃料の開発で、英政府が実証実験を助成するほか、ドイツとオーストリアの企業連合が工業向け水素の実証プラント建設を計画するなどの動きがある。また、トヨタ自動車など国際企業13社が水素と燃料電池の開発に向け、協議会を設立するなど、企業間の関係強化も進んでいる。
英政府はこのほど、水素・ディーゼル燃料自動車の実証実験に関連し、ULEMCo(Ultra Low Emission Mileage Company)に130万ポンド(約160万ドル)を助成する。ULEMCoのパートナーは、ウェストミンスター・シティ・カウンシル、ヨークシャー国民保険(救急サービス)、アバディーン・シティなど。水素・ディーゼルのデュアル燃料でトラックや大型バンを走行させる計画だ。英国では現在、運送業からの二酸化炭素(CO2)排出量は、輸送部門全体の30%を占めているという。ULEMCoが2月1日、発表した。
また、独シーメンス、オーストリア製鉄大手のフェストアルビーネ、電力会社のフェアブントが、工業向け再生可能水素の実証プラント建設を計画する。フェストアルビーネのニュースリリースによると、CO2排出量の削減が求められる製造業は、風力や太陽光発電の余剰電力による水の電気分解で製造した水素の使用を検討する。この再生可能水素プラントは、世界最大規模で、シーメンスが研究開発したプロトン交換膜(PEM)技術を活用するとしている。
一方、仏エア・リキードは1月初旬、米テキサス州南東部のボーモントに世界最大級の地下水素貯蔵施設が完成したと発表した。施設の規模は、地下1,500メートル、直径70メートルで、30日分の貯蔵能力があるという。水素は、エア・リキードのパイプラインを利用し、メキシコ湾岸地域に供給される。
このほか、トヨタ自動車は1月18日、国際企業13社で「水素協議会」を設立したと発表。スイスで開催された「世界経済フォーラム」(通称ダボス会議)で明らかにした。水素協議会は、水素エネルギー社会への移行プロセスで、水素と燃料電池の開発や商業化に向け、年間14億ユーロ(約1,700億円)の投資を行う方針としている。参加企業は、トヨタ、本田技研工業、川崎重工業の日本勢のほか、英蘭系ロイヤル・ダッチ・シェル、仏トタル、エア・リキード、エンジー、アルストーム、独ダイムラー、BMW、リンデ、韓国の現代自動車、英アングロ・アメリカン。