日本国内で4月1日、電力の小売り全面自由化が始まった―これまで、電力会社を選択できたのは、契約電力50キロワット(kW)以上の需要家に限られていたが、一般家庭を含めた全ての電気利用者が電力会社を選択できる時代を迎えた。この自由化の流れを受けて、日本の電力業界にどのような変化が生じるのかを探ってみた。

戦後から現在まで、日本国内で電力事業を行う会社は「一般電気事業者」として、地域ごと(北海道、東北、東京、中部、北陸、関西、中国、四国、九州、沖縄)に10社独占体制が敷かれ、発電・送電・小売りの全てを担ってきた。その後、1995年に「発電の自由化」が実施され、それまで発電が認められていた一般電気事業者、電源開発(Jパワー)などの「卸電気異業者」に加え、鉄鋼会社や石油会社などの「独立系発電事業者(IPP)」が誕生した。2000年には小売りの部分自由化(契約電力2,000kW以上)が実施されたことに伴い、一般電気事業者以外に小売りが可能となる「特定規模電気事業者(新電力、PPS)」という区分が発足した。

小売りの部分自由化は段階的に拡大され、2005年までに契約電力50kW以上の高圧需要家までが対象となり、販売電力量ベースで国内の約63%が自由化された。今回の全面自由化に伴い、これまでの一般電気事業者や特定規模電気事業者という区分が、新たに「発電事業者」「送配電事業者」「小売電気事業者」となり、この全てを担ってきた一般電気業者もそれぞれの事業区分に実質分離されることになった。これによって、地域独占も完全撤廃され、10電力会社による管轄エリアという概念もなくなり、日本列島が1つのマーケットとして捉えられるようになった。

これまで、一般家庭に代表される低圧需要家は、一般電気事業者による決まった料金メニュー(規制料金)しか選択の余地がなかった。今回の自由化では、多種多様な企業の参入により競争原理が働くことで、電気料金の引き下げが期待できるとともに、多彩な料金メニューから当事者にあった料金メニューが選択できるようになった。たとえば、電気とガス、電気と石油、電気と通信などのセット割引をはじめ、コンビニエンス・ストアやスーパーマーケットによるポイントサービス、さらに再生可能エネルギー比率が高い電気などの選択もできるようになる。

電気料金だけの価格競争になった場合、値下げ合戦に陥り、最終的に既存の一般電気事業者しか生き残れない危険性もある。電気料金以外の価値を見出すことは、多種多様な企業が生き残るという意味で重要な戦略になる。既存の一般電気事業者も、様々な業種の企業と提携して新たなサービスを開始するケースもみられる。