ドナルド・トランプ氏が1月20日、第45代のアメリカ合衆国大統領に就任する。大統領選を通じて繰り返されてきた過激な発言をどこまで実行に移すのか、その言動が注視される中、エネルギー分野関連では石油業界寄りとされる人物の入閣が相次ぐ。石油・天然ガスなどの開発推進派や、エネルギー規制撤廃派が顔を揃えたことで、オバマ政権が取り組んできた環境重視の政策が一変する可能性がある。(写真はホワイトハウス)

トランプ新大統領の入閣構想で注目されたのが、国務長官人事だった。白羽の矢が立ったのは、石油メジャー、エクソンモービルのレックス・ティラーソン前最高経営責任者(CEO)だ。同氏は、エクソンのロシア進出を推し進めてきた立役者で、ロシアがウクライナのクリミア半島に侵攻した際、オバマ政権が発動した対ロシア経済制裁に反対の意を表明。ロシアとの距離が近すぎることで、上院での議会承認を得られないとの見方が広がった。ただ、1月11日の上院公聴会で「現在のロシアは脅威」などと明言した。承認されれば、米国政治史上、初の石油会社出身の国務長官が誕生する。

一方、米国環境保護庁(EPA)長官には、オクラホマ州のスコット・プルイット司法長官が指名された。この人選について、米国石油協会(API)は声明を発表。ジャック・ジェラードCEOが「米石油・ガス産業の重要性を理解し、エネルギー産業を維持、発展させる新たな政策をとるだろう」と期待感を示した。また、エネルギー長官には、テキサス州前知事のリック・ペリー氏が指名された。同氏はこれまで、大統領選に2度、出馬した経験を持つ。

このほか、国家経済会議(NEC)委員長に指名されたのは、ゴールドマン・サックスの元社長兼最高執行責任者(COO)のゲーリー・コーン氏。このポストは、米上院での承認を必要としないため、委員長就任は決定している。同氏は、ニューヨークでコモディティのトレーダーからキャリアをスタートし、金融大手ゴールドマンのトップにまでのぼり詰めた。

ところで、内務相には、ワシントン州選出の下院議員(共和党)、キャシー・マクモリス・ロジャース氏が指名された。内務省は、米連邦政府が保有する土地でのエネルギー資源開発、メキシコ湾など大陸棚外域の石油・天然ガス掘削や、風力発電の許認可権を有する。同氏はこれまで、石油・ガス開発に積極的で、気候変動問題には懐疑的な立場を貫いてきたとされる。