米エネルギー情報局(EIA)は12月、米国におけるパイプライン事情についていくつかの報告書を公表した。(写真はイメージ)

EIAは12月初旬、米国のメキシコ向け天然ガスパイプラインの輸送能力が過去数年で大幅に増加し、日量73億立方フィートに達したと発表した。今後、数年内にメキシコ中部と北東地域に向かう送ガス管が完成する見通しという。この背景には、メキシコ国内における発電需要が増加する中、液化天然ガス(LNG)に比べ、米国からパイプラインで購入する天然ガスが割安であるという事情があるとされる。

EIAはまた、米ニューイングランド地方で、石油・天然ガス会社の米スペクトラ・エナジーが建設中の天然ガスパイプラインが間もなく稼働すると発表。この送ガス管は、ニューイングランドとアバラチア盆地を結ぶアルゴンキン・インクレメンタル・マーケット(AIM)パイプライン(能力は日量3億4,600万立方フィート)で、年内にも完成する見通しだ。産出された天然ガスをマサチューセッツ州のセーラム・ハーバー火力発電所(出力は674メガワット=MW)に供給する。

このほか、EIAは、米オハイオ州ユーティカ埋蔵層からの天然ガス輸送能力が2018年末までに日量ベースで68億立方フィート増加すると予想。その根拠について、オハイオ州における複数パイプライン計画が認可されたためとした。米連邦エネルギー規制委員会(FERC)によると、米国で数年間のうちに稼働する予定のパイプライン・プロジェクトとして、ローバー(日量32億5,000万立方フィート)、リーチ・エクスプレス(同15億立方フィート)、ライン・エクスプレス(同6億立方フィート)、ネクサス・ガス・トランスミッション(同15億立方フィート)を挙げている。

ところで、米陸軍工兵司令部は12月4日、ノース・ダコタ原油パイプライン計画に関連し、ミズーリ川を横断する工事の許可を取り消したと発表した。同日付の『ニューヨーク・タイムズ』によると、周辺地域に居住する先住民や環境保護団体などが工事認可に反対の意を表明していたという。工兵司令部は、別ルートで送油管を建設する必要性に言及した。他方、このパイプライン計画を支持するトランプ次期大統領が、正式就任後に今回の決定を覆すのではないかとの見方も出ているという。