世界最北の内陸国であるベラルーシ(首都:ミンスク)で現在、原油取引をめぐり、最大供給国であるロシアとの間であつれきが生じている。天然ガス代金の未払いを理由に、ロシアがベラルーシへの原油供給を削減する措置に対し、ベラルーシはイランなどからの輸入で対抗しようとする。そうした状況下、アゼルバイジャン産原油がベラルーシに輸送されたとの情報が伝わった。

ベラルーシの通信社『ベルタ』(10月31日付)によると、同国のモズィリ製油所(精製能力は日量約20万バレル)に中央アジアのアゼルバイジャンから原油が到着した。それによると、アゼルバイジャン産原油8万4,700トンがジョージア(グルジア)のスプサ港からウクライナのオデッサ港に運ばれた後、ウクライナを経由してベラルーシに鉄道輸送された。輸送は、アゼルバイジャンの国営石油会社であるソカールのトレーディング部門が担当したとしている。アゼルバイジャン産原油の調達によって、モズィリ製油所はフル稼働ができるという。

ベラルーシはもともと旧ソ連邦に属し、現在もロシアと経済的な結び付きが強いが、最近になり、エネルギー問題で両国間の対立が表面化している。ベラルーシによる天然ガス代金の未払いがあるとして、ロシアが原油供給を絞っているためだ。ベラルーシは、対抗策として原油輸入でイランなどとの協議に乗り出し、ロシアを牽制し始めた。

10月7日付の『イラン・デイリー』によると、ベラルーシのアレクサンドル・ルカシェンコ大統領は、原油供給でイランと協議している事実を明らかにした。イランの核開発にからむ欧米諸国と合意で、経済制裁を解かれたイランは現在、中・東欧諸国に原油の販路を拡張しており、双方の思惑が一致したとされる。

一方、ロシア側は「原油供給を絞っているのは、ベラルーシの天然ガス代金未払いが2億7,000万ドルあるため」と反論。ベラルーシ側も「ロシアによる原油価格の設定が明確でない。原油と天然ガスとを混同すべきではない」と、互いに一歩も引かない構えだ。

ベラルーシが今般、アゼルバイジャン産原油を輸入したことで、ロシア側が態度を硬化させる可能性が大きくなるとの指摘が出ている。

【参考】  ベラルーシ関連記事を本サイト「エネルギーコンフィデンシャル」(10月14日付)で取り上げています。タイトルは『世界最北の内陸国ベラルーシでロシアとのエネルギー紛争が再燃か』。