パキスタンでは、これまで繰り返し棚上げされてきたカリファ沿岸製油所の建設プロジェクトがようやく着工に漕ぎ着ける見通しとなった。その一方、カシミール地方の領有権をめぐり、隣国インドとの対立が高まるなど、エネルギー分野での協力関係に悪影響が出るとの懸念もある。
10月5日付のサイト『タイムズ・オブ・イスラマバード』などによると、パキスタン石油・天然ガス資源省の関係者が、バロチスタン州にあるカリファ沿岸製油所の建設プロジェクトの進捗状況について「間もなく着工する予定」との見通しを示した。このプロジェクトは2007年10月に認可されたが、資金調達がうまくいかず、これまで何度も棚上げされてきた経緯がある。今回は、資金繰りの目途がついたようだ。パキスタン・アラブ・リファイナリー・カンパニー(PARCO)が、精製能力で日量25万バレルの設備を建設する予定だ。
他方、10月10日付のサイト『カイバル・ニュース』などによると、パキスタンでは、カイバル・パクトゥンクワ州(KP)政府が大規模な建設プロジェクトに乗り出すという。この計画には、製油所のほか、セメント工場、水力発電プラントなどの建設が含まれるとしている。
一方、懸念材料もある。隣国インドとの関係だ。両国は「カシミヤ織り」の発祥地として知られるカシミール地方の領有権をめぐり、再び対立が深まっている。印外務省は9月末、今年11月にパキスタンの首都イスラマバードで開催される南アジア地域協力会議(SAARC)首脳会議への不参加を表明した。インドが実効支配するジャム・カシミール州で9月18日、パキスタン政府との関与が疑われる武装集団が、インド陸軍の施設を襲撃し、インド兵18人らが死亡したことが背景にあるようだ。
パキスタンとインド両政府は10月末、相手国の大使館に駐在する外交官各1人を追放すると発表した。インド政府は追放の理由について、ニューデリーにいるパキスタンの外交官がスパイ行為を行ったと主張した。
これに対し、パキスタン政府はイスラマバードに常駐するインド大使館員が(外交関係に適用される)ウィーン条約に違反したと強調するなど、険悪な関係が続いている。