一昨年来の原油安を受けて、北米における原油増産は抑制され、企業の中にはパイプライン建設計画を断念、もしくは延期に追い込まれるケースがみられる。このほか、液化天然ガス(LNG)プロジェクトでも投資計画が中止されるとの情報が伝わっている。(写真はイメージ)
カナダのエンブリッジはこのほど、米ノースダコタ州バッケンで開発予定のサンドパイパー原油パイプラインの建設申請を取り下げた。9月1日付の『CBCニュース』などによると、この送油管の投資額は20億ドルとされ、エンブリッジは同州で今後5年間は新たなパイプラインが必要ないと判断したという。サンドパイパーは、ノースダコタ州西部からミネソタ州を経由し、ウィスコンシン州北部を結ぶ全長991キロメートルの送油管建設プロジェクト。
他方、エンブリッジは9月6日、米スペクトラ・エナジーを280億ドルで買収することを計画中と発表した。仮に買収成立となれば、北米最大級のエネルギーインフラ会社の誕生となる。エンブリッジの場合、カナダ産のオイルサンド(油砂)を米メキシコ湾岸の製油所に送油するのに対し、スペクトラは天然ガスを米東海岸に輸送している。このため、両社は事業の重複によって、独占禁止法に抵触する可能性は低いと判断したようだ。
一方、米司法省は9月中旬、ノースダコタ州で計画されるダコタ・アクセス原油パイプライン建設に関連し、環境団体や先住民らの建設反対運動を受けて、事業主体に建設延期を申し渡した。9月10日付の『ワシントン・タイムズ』は、この送油管は当初、2016年の年末に操業を開始する予定で、原油日量47万バレルを同州バッケンからイリノイ州を経てメキシコ湾岸に輸送する計画だった。今後、建設費用の上昇につながる可能性も大きく、建設ルートを変更するかについては、現時点では未定であるとしている。
このほか、今夏、米エクソンモービルが英BPや米コノコフィリップスと計画するアラスカ液化天然ガス(LNG)プロジェクトに関連し、計画の中断を決断したとの情報が伝わった。『ウォール・ストリート・ジャーナル』(WSJ)などは、アラスカLNGの投資額が450~650億ドルとした上で、現在のLNG価格では採算ベースに乗らないと判断したと報じた。これに対し、アラスカLNGの権益25%を保有するアラスカ州政府は計画を中止することなく、前進させる方向で考えているようだ。