原子力発電所の建設をめぐる最近の動きで目立つのは、ロシアとイラン、トルコ3カ国との関係強化が、原子力ビジネスでも見られ始めたことだ。また、中国が出資する英国での原子力ビジネスに関連し、最終承認を先延ばししていた英メイ政権がこのほど、これを認める決定を下した。(写真はイメージ)

イランは9月10日、同国で2番目となる原子力発電所の建設計画をロシアの援助を得て始動した。南部の港湾都市であるブーシェフルに発電能力1,057メガワット(MW)の原子炉2基を建設する予定で、2018年に建設開始の見込みという。総建設費は約85億ドルで、工期は10年を予定する。イラン初の原発もロシア(国営ガスアトム)の協力で完成し、2011年9月12日に稼働した。9月10日付の『AP通信』によると、イランは今後15年間で、原子力による発電能力を2万MWまで引き上げる予定という。

他方、トルコはロシアとの関係改善を受けて、頓挫していたアックユ原子力発電所の建設計画が再び動き出した。この原発は、トルコ南部メルスィン県のビュユケジェリに建設する予定で、ロシアの原子力企業が落札した。2020年代に120万キロワット(kW)級のロシア型加圧水型原子炉(VVER)を4基建設するという。

ところで、原子力ビジネスに関連しては、英国でも動きがあった。英政府は9月15日、中国広核集団(CGN)が出資する原子力発電所の新設計画(ヒンクリーポイントC)を承認したと正式発表した。就任から間もないテリーザ・メイ英首相は7月末、最終承認までさらなる検討が必要として着工許可を秋口まで先送りすると表明した。英国の欧州連合(EU)離脱後を見据え、経済面で中国との緊密な関係を強化したいとする一方、原発計画に中国資本が入るのは安全保障面で懸念されるとの指摘が出ていた。

今回、英政府は「経済と安保」の妥協策として、外資規制を盛り込むことにした。ヒンクリーポイントCの事業主体である仏EDFが株式を売却する際、英政府の承認が必要となること、基幹事業で英政府が特別な株式を保有するとともに、事業主体が変更する場合、規制当局の権限が及ぶなど、外資規制を導入することで最終決着を図ったようだ。

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