イスラム過激派組織「IS」の台頭など、国内治安の悪化が続くイラクだが、原油生産量は増加傾向にあり、7月には今年1月以来で最大規模を記録した。また、主要油田の1つである同国南東部のキルクーク油田の3鉱区で原油出荷が再開したとの情報が伝わっている。
イラク国内における原油生産量は、6月の日量455万9,000バレルから7月には同463万2,000バレルに増加したことが判明した。日量477万5,000バレルだった1月に次ぐ数量に達したことになる。8月初旬、『ロイター通信』が報じた。報道によると、イラクの原油輸出量は7月、日量ベースで320万2,000バレル、6月は同317万5,000バレルだった。また、7月の原油収入は37億4,400万ドルだった。
他方、イラク中央政府は8月、キルクーク油田のババ・グルグルなど3鉱区から原油出荷に向けた協議でクルド自治政府(KRG)と合意し、8月下旬に試験生産を開始したという。キルクーク油田での生産開始で、イラクの原油輸出量は日量ベースで15万バレル増加するとみられている。この鉱区を運営するのは、ノース・オイル・カンパニー(NOC、本社:キルクーク)。KRGとの支払いをめぐるトラブルで、イラク中央政府は3月半ばにキルクーク地域のパイプライン輸出の停止を指示していた。
このほか、8月15日付のサイト『パイプライン』によると、イラク石油省は、同国南東部のマイサーン県で新たな天然ガス処理プラントが稼働したことを明らかにした。このプラントでは、ファッカ、ブズルガン両油田で産出される原油随伴の天然ガスが処理される予定。
サダム・フセイン政権の崩壊にともなう「IS」の台頭で、戦闘状態が続くイラクでは現在、国内治安の悪化によるインフラ整備の遅れが目立つ。発電プラント数や天然ガスが足りないため、電力不足が常態化しているのも事実だ。ただ、対IS戦闘では、失地回復で戦況がイラク軍に有利との情報も伝わっている。
一方、9月に石油輸出国機構(OPEC)が開催する非公式会合で「原油増産の凍結」で加盟国が合意するかどうかも、中東産油国における原油の生産動向を見極める上で注目点となりそうだ。