カナダでは現在、エネルギー開発事業が逆風にさらされている。規制当局は、これまで企業が開発事業を進めてきたパイプライン計画の認可延長にかかわる申請を保留したほか、ブリティッシュ・コロンビア(BC)州で計画されていた液化天然ガス(LNG)プロジェクトが延期されるなど、ビジネス投資で失速感が目立つ。

カナダ国家エネルギー委員会(NEB)は7月初旬、加エネルギー企業のエンブリッジが申請済みの「ノーザン・ゲートウェイ・パイプライン(NGP)」計画の認可延長を保留する判断を下した。NGPはアルバータ州で産出されたオイルサンド(油砂)をBC州北部に輸送するパイプライン建設計画だが、環境保護団体や先住民グループらの建設反対が根強く、建設工事の遅れが指摘されていた。

一方、BC州キティマット港に建設が予定されている大型の液化天然ガス(LNG)輸送事業に関連して、このプロジェクトを主導する英蘭系ロイヤル・ダッチ・シェルは7月12日、2016年末までに決めるとしていた最終投資決定(FID)の延長を発表した。新たな投資時期は未定とした。シェルなどで構成される事業主体であるLNGカナダは、世界的な経済状況を踏まえ、投資決定するにはまだ議論の余地が残ると判断したという。LNGカナダの権益は、シェルが50%、ペトロチャイナが20%、三菱商事が15%、韓国ガス公社(KOGAS)が15%となっている。

そのほか、中国海洋石油(CNOOC)の子会社であるネクセンがこのほど、今年1月にカナダのアルバータ州北部にあるロング・レイクのオイルサンド施設の爆発事故で損傷した設備に関連し、再稼働しない方針を固めたことが判明した。7月2日付のサイト『リグゾーン』などによると、この設備はシェールオイル系の軽質原油に押され、ビチューメンのアップグレードのため、高コストにつき、競争力を失っているとした。ネクセンは、事故による損失もあり、競合設備と比べ効率性で劣ると判断したようだ。ロング・レイクの従業員(カルガリーが本社)は全員が解雇される予定という。ネクセンでは昨年来、パイプラインからの原油漏洩や、施設での大規模な火災事故の発生が目立つ。これを受けて、当局から安全性に対する改善策が求められていた。

さらに7月18日には、BC州のバンクーバー市議会が、同市内における原油貯蔵施設の拡張及び新設工事を禁止する法案を可決した。精製能力が日量5万バレル以下の既設製油所も含まれるという。法案可決の理由として「公共の安全と環境保護」が重視されたという。7月19日付のサイト『リサーチ・ビューズ』などが報じた。