ロシアのサンクトペテルブルクでこのほど、同国政府の主催による国際経済フォーラムが開催された。この中、ウクライナ問題を契機に対立する米欧との関係見直しについて、プーチン大統領が欧州連合(EU)諸国に対し、経済協力の再構築を呼びかけた。

原油など資源価格の低迷が続く中、ウクライナ問題で米欧諸国と冷え切った関係にあるロシア経済は苦境に陥っている。今回の国際経済フォーラムで、プーチン大統領は対ロシア制裁で実害を被ったのは欧州であり、米国ではないと主張。その上で、欧州は米国と距離を置いた外交スタンスを貫くべきと呼びかけたという。とりわけ、欧州は経済分野でロシアとの協力再開を急ぐべきと訴えたとされる。一方で、ウクライナ東部で親ロシア派武装勢力とウクライナ政府軍との睨み合いが続く状況に関し、プーチン大統領は、和平合意の履行を遅延させているのはウクライナ側にあると、これまでの主張を繰り返したようだ。欧米の主要メディアが一斉に報道した。

ところで、エネルギー分野でみると、ロシアと欧州との関係が改善の兆しにあることが数字上からもうかがえる。国営ガスプロムは6月初旬、今年1~5月の英国向け天然ガス輸出量が前年同期比91.5%増の38億5,000万立方メートルになったと発表した。英国のほか、主な輸出先の増加率は以下のとおり。

デンマーク   139.3%

オランダ    103.8%

ギリシャ    85.8%

ポーランド   35.6%

フランス    35.0%

オーストリア  21.3%

ドイツ     10.3%

ガスプロムによると、上記のとおり、デンマークなどは高い増加率となったが、欧州全体の総輸出量は前年同期比16.2%増の100億立方メートルに留まったという。プーチン演説をきっかけに、ロシアとEUが経済分野で歩み寄りを加速することができるのか、エネルギー関係者の注目が集まる。