ネパール政府とインド政府は6月7日、両国間を結ぶ石油パイプライン(全長41キロメートル)の早期建設で合意した。6月8日付のサイト『カトマンズ・ポスト』によると、土地取得から技術面、入札手法といった点で双方が合意し、建設期間は30カ月、総投資額は44億ルピー(約6,600万ドル)を見込む。ガソリン、ディーゼル、灯油をインドからネパールに輸送するという。
ネパールでは、2015年4月25日に首都カトマンズの北西約77キロメートルを震源とする大地震が発生してから1年が経過。現地では復旧の遅れやインドとの国境封鎖もあり、燃料不足が深刻化していた。
ところで、石油パイプライン(全長41キロメートル)の建設計画はそもそも、1年前に契約される予定だった。ネパールのニュース・サイト『カンティプール』(2015年4月11日付)は当時、ネパールのアムレクガンジ(ナラヤニ県)とインドのラクサウルをつなぐ石油パイプラインの建設に両国が合意し、同年5月初めにも契約すると報じていた。この建設計画は1995年、ネパールに石油製品を販売するインド国営石油会社(IOC)が、輸送コストの5割削減を目的にネパール側に提案していた。
ところが、両国関係に亀裂が入る事態が生じた。昨年9月20日、ネパールで新憲法が発布されたが、同国南部の政党やインド系少数民族が人口数に比例した議会の議席配分になっていないとして、インドとの国境で座り込みをして道路を封鎖し、燃料などの輸送網が事実上遮断された。また、ネパールとインドとの国境を流れるカリ・ガンダキ川流域のカラパニ地区の領有権をめぐり、ネパールがあらためて自国の領有権を主張したことも、インド系少数民族の反感を買ったとされる。
ネパールでは、地震発生前から運輸業界の従事者らを中心とするストライキが頻繁に発生し、消費者に十分な物資が供給されないケースが目立っていた。さらに大地震の発生がネパール経済の悪化に拍車をかけた。ネパールとインド両政府が今回、石油パイプラインの早期建設に向けて一歩踏み出したことで、ネパールの燃料事情が改善されると期待されている。