本特集記事(2015年11月18日付)で、ジブチ(首都:ジブチ)とエチオピア(首都:アジスアベバ)が、ディーゼルやガソリンなどの燃料を輸送するパイプライン(HOAP)の建設に関連し、その枠組み協定に調印したことを伝えた。このほど、本格的な工事が6月にスタートすることが明らかとなった。

2月12日付のサイト『スーダン・タイムズ』などによると、米国とジブチの各政府関係者との協議で、今年6月からHOAP建設工事の開始が明らかになったという。米投資企業のブラックストーンと南アフリカの石油・天然ガス企業であるMOGが折半出資で合弁企業(JV)を設立し、建設費用は15億5,000万ドルを見込む。完工は2018年を予定。ジブチのダメージョ港とエチオピア中央部のアワシュを結ぶパイプラインは全長550キロメートルで、輸送能力は日量24万バレル(原油換算)になる見通しだ。

一方、建設着工に関連し、政治的な不安定さが危惧されているのも事実だ。イスラム教スンニ派のサウジアラビアが1月3日、イランとの外交断絶に踏み切ると、スンニ派のバーレーンやスーダンのほか、人口約90万で、その9割をスンニ派が占めるジブチもサウジに同調し、イスラム教シーア派のイランとの外交関係を断ち切った。

結果として、欧米などによる経済制裁の解除を受けて、欧州への原油輸出が始まったイランにとって、輸送航路の大動脈であるホルムズ海峡と並びバブ・エル・マンデブ海峡の航行が脅かされるとの懸念が広がっている。バブ・エル・マンデブ海峡の幅は、わずか約18マイル(30キロメートル)だ。ペルシャ湾からスエズ運河とスエズ―地中海(SUMED)パイプラインを経由するルートで、「アフリカの角」と呼ばれるソマリア半島とアラビア半島との間のチョークポイント(海上輸送路の渋滞地点)である。

米エネルギー情報局(EIA)によると、ホルムズ海峡ではここ数年、同海峡を通過した原油・石油製品が日量1,700万バレルとほぼ横ばいで推移しているのに対し、バブ・エル・マンデブ海峡を通過した原油・石油製品は、2009年の日量約290万バレルから13年には同380万バレルとなり、年を追うごとに増加傾向にあるとしている。