【市況】
九州の熊本地方で14日から続く活発な地震活動を受け、電力市場に影響が出ている。最初の大規模な地震が発生した翌日の15日、九州地方の電力需要は前年比20.6%もの減少を記録した。その後16日が同28.4%、17日が同31.7%と連日、需要の低下が止まらない。他の地域では、下落幅が15日で4~10%、16日で10~15%、17日で15~25%だったことを念頭に置くと、九州地方の下落幅が突出しているのが分かる。
この背景には、足元で九州地方での電力需給が大きく崩れていることがある。九州地方では太陽光からの供給力が高く、その発電能力は500万キロワット(kW)超と、原発の5基分にも相当する。このため、晴天が続くと自ずと発電量が急上昇するという現象が発生する。備蓄ができない電力は、自ずとスポット市場へと供給されることになる。
一方、需要面では、一連の地震の影響で大規模な工場で稼働停止を余儀なくされており、電力消費が伸びない。目立ったところでは、自動車部品メーカーのアイシン精機が熊本県にある工場を操業停止。これを受けてトヨタ自動車は17日、23日まで福岡県宮若市の工場で自動車組み立てラインを停止すると発表済みだ。また、大手電機メーカーのソニーも、熊本と長崎県内にあるスマートフォンに使用されるセンサーの製造工場を停止したとしている。18日の段階で生産再開は未定としている。このような大手製造メーカーの相次ぐ工場の稼働停止を受け、電力需要が減少していることは明らかだ。
その結果、電力のスポット市場では19日、九州地方の相場が他地域に比べて低い水準で推移した。この数カ月間、国際市場において液化天然ガス(LNG)や原油といった主要な火力発電用の燃料が大きく値下がりしているため、電力のスポット市場では燃料安を反映して、全国的に概ねkWあたり10円未満での取引が続いている。余震が続いているなかで大口需要家向けの電力消費が伸び悩み、向こう1週間は九州地方のスポット電力相場が他地域のそれを下回って推移する可能性が高い。