核合意によって欧米などからの経済制裁が解かれたイランでは現在、全方位にわたり、エネルギービジネスを展開している。原油の長期にわたる安定的な販売体制の確立に躍起となっているようだ。
3月3日付のサイト『プレスTV』などによると、今年2月にアジア各国がイラン産原油を輸入した量は、前年同月比で約25%増の日量128万バレルとなり、過去2年間で最高水準となった。経済制裁の解除を受けて、インドや韓国向けが倍増したほか、欧州向けも好調だったという。イラン産原油の輸出量は、この2カ月で日量90万バレルから同220万バレルまで増加した。イラン産原油の輸入上位4カ国は、中国、インド、日本、韓国だった。
一方、イラン政府は3月24日、同国の南アザデガン油田の開発で仏トタルと契約を交わしたと発表した。ただ、契約額は明らかにしていない。米エネルギー情報局(EIA)によると、南アザデガン油田の原油埋蔵量は332億バレル。約10年前に国際石油帝石(INPEX)がアザデガン油田の開発でイランと契約を締結したが、核兵器開発疑惑によってイラン制裁を強化する米国に追随し、撤退した経緯がある。
米国は1996年、イラン制裁法を制定、それに実効性を持たせるため、2010年7月、新たにイラン包括制裁法(CISADA)を追加制定した。CISADAの施行で、イランで活動する企業にも制裁を加えるという内容が盛られ、INPEXも同調した。
このほか、イランはこのほど、同国産原油を全量使用することを条件とし、スペインやブラジルの製油所に出資する意向であることを示した。4月4日付のサイト『ザウヤ』などによると、これら2国のほか、ギリシャやインドなどの製油所も出資対象の候補に挙がっているとした。
イランが全方位にわたり、エネルギービジネスを展開する背景には、制裁によって立ち遅れた国内経済の再建を急ぐことにある。そのためにも、原油の長期的な安定販売先の確保が、喫緊の課題と捉えているようだ。