イラクのクルド自治政府(KRG)が、イランとの関係強化に乗り出した。KRGが産出する原油をイランに輸出する協議でこのほど、双方が合意に達したという。このほか、クルド地域のシェワシャン油田で軽質原油の産出が確認されるなどの情報が伝わっている。
4月3日付の『ロイター通信』は、KRGの月次レポートで、自治政府からの今年3月の原油輸出量が日量32万7,000バレルで、前月に比べ減少したと報じた。原油は、KRG-セイハン・パイプライン経由で輸送され、トルコのセイハン港から輸出されるが、3月半ばから2週間程度にわたり、停止したことが輸出減少につながったという。イラク中央政府は3月、油田地帯であるキルクークからの輸出停止を指示していた。
停止指示を受けて、KRGは原油輸出先の分散化を模索し始めた。KRGが目を付けたのがイランだった。4月5日付のサイト『エクード・デイリー』によると、KRG天然資源省の代表団とイラン石油相がこのほど、KRGが産出した原油をイランのケルマンシャー州に輸出することで合意したという。KRGはトルコに加え、イランを重要な輸出先と見込む。KRGとイランは、天然ガス・パイプライン建設でも協議しているという。
一方、石油・天然ガス掘削を手がけるガスプラス・カラカン(GPK)はこのほど、イラク・クルド地域のシェワシャン油田(シェワシャン-2井)の掘削テストを完了した。深さ約3,000メートル近くまで掘り進めた結果、API比重で47度の軽質原油4,400バレル(日量ベース)の産出を確認したという。投資額は1,950万ドルで、2016年の年末までに日量1万バレルをめどに生産を開始する予定。GPKは、英ニューエイジの子会社で、シェワシャン油田の権益80%を保有する。4月5日付のサイト『オイル・アンド・ガスジャーナル』などが報じた。
ところで、石油輸出をめぐって、KRGとイラク中央政府との対立が一昨年に表面化した。2014年12月、中央政府に帰属するキルクーク州の油田で産出した石油を政府系企業に提供する代わりに、KRGは中央政府から予算配分を受けることで合意。ところが、KRGは日量50万バレル以上を中央政府に提供してきたが、満足な予算配分になっていないと主張、取引を停止した。結果として、KRGはイラク供給分をトルコ向けに変更し、日量60万バレル以上の石油を直接輸出する行動に出た。