旧ソ連邦に属していたアゼルバイジャンとアルメニアが互いに領有権を主張するナゴルノ・カラバフ自治州で4月初め、衝突が発生し、双方で少なくとも30人の兵士が死亡したとの国際報道が駆け巡った。アゼルバイジャンには最近、米2企業がエネルギー分野への進出を決めたばかりだが、その矢先の紛争勃発となった。(写真はKBRのニュース・リースから引用)

米エンジニアリング会社のKBR(本社:ヒューストン)は3月半ば、同社とアゼルバイジャン国営SOCARが昨年設立した合弁企業(JV)が、同国のヘイダル・アリエフ・バクー製油所の近代化プロジェクトを受注したと発表した。設計・調達・建設(EPC)業務とコンサルティング業務を請け負うという。計画によると、バクー製油所の精製能力を年600万トンから750万トンに引き上げるほか、ユーロ-5(2020年に適用される排出ガス規制)基準の燃料を製造するとしている。

他方、アゼルバイジャンでエネルギー関連事業を展開する、米グリーンフィールズ・ペトロリアム(GP)は、経営破綻した企業のバハール・グループと、アゼルバイジャンのバハール・エナジー・リミテッド・オペレーティング・カンパニーの株式66.7%を600万ドルで買収することで合意した。3月16日付のサイト『アザール・ニュース』などが報じた。

それによると、GPは、バハール・エナジーの全株式を取得し、総負債額5,760万ドルを肩代わりするという。バハール・エナジーは、アゼルバイジャン領カスピ海のガムデニズ油田の開発に携わっている。

米2企業が相次いでアゼルバイジャン進出を果たしたが、紛争地とバクーなど油田地帯は離れているため、現時点でビジネスに支障を来たすことはないとの見方が一般的だ。

ただ、この紛争は、アルメニアの背後にロシア、アゼルバイジャンにはトルコがついているとされ、両国関係が悪化しているロシアとトルコとの代理戦争につながると危惧される。そうした状況下、ロシアが停戦・和平協議を主導する動きが伝わる。今回の紛争が鎮静化に向かうのか、それとも拡大するのか、今後の展開次第で、外資系エネルギー企業にも悪影響が及ぶ可能性が大きいとの指摘もある。