カナダ石油生産者協会(CAPP)が先に公表した年報で、カナダの原油生産量は2016年の日量385万バレルから、2030年までに同510万バレルに増加すると予測した。CAPPは、その根拠としてアルバータ州のオイルサンド(油砂)生産量が53%増になるとした。こうした状況下、複数の石油メジャーがカナダでのオイルサンド事業から撤退する動きが相次いでいる。カナダ政府は中国企業に参入を呼びかけている。
英蘭系ロイヤル・ダッチ・シェルは5月31日、カナダでのオイルサンド事業の売却で当該企業と合意したと発表した。シェルは、同国で展開するすべてのオイルサンド関連権益を売却し、アサバスカ・オイル(本社:アルバータ州のカルガリー)が主導する「アサバスカ・オイルサンズ・プロジェクト」(AOSP)への権益比率を現在の60%から10%へ減らすとの意向を示した。
他方、カナダ政府は6月8日、同国でのオイルサンド開発事業に中国企業の進出を誘致していると発表した。近年の原油価格の下落や開発コスト上昇を受け、カナダではオイルサンド・プロジェクトの収益性が悪化したことで、外資系企業の撤退が相次いでいる。前述したロイヤル・ダッチ・シェルのように、ここ数カ月間で複数の石油メジャーが関連資産をカナダ企業に売却した総額は230億ドルに相当するという。
これに対し、米石油・天然ガス開発会社のキンダー・モーガンと子会社のキンダー・モーガン・カナダは、カナダのトランス・マウンテン原油パイプラインの輸送能力を増強する計画で最終投資決定(FID)を下した。55億ドル相当の投資額を調達するため、キンダー・モーガンは子会社の新規株式公開(IPO)を実施する意向を示した。こうした手続きを経た上で、今年9月に着工、2019年12月の完工を目指すという。
このほか、加ハスキー・エナジーは5月末、カナダ東部のニューファンドランド沖合にあるウエスト・ホワイト・ローズ鉱区の開発に着手すると発表した。2022年に原油生産を開始し、25年までに日量約7万5,000バレルの生産量を目指す。投資額は約16億ドル。