ウクライナ政府が天然ガスの安定調達に向け、さまざまな政策に取り組んでいる。また、原発事故で放射性物質に汚染され、無人地帯となった旧ソ連時代のチェルノブイリ発電所の跡地に太陽光発電所を建設する構想があり、欧州復興開発銀行(EBRD)が大きな関心を寄せているという。
ウクライナ政府は昨年12月半ば、国内天然ガス生産への課税率を29%から12%へ引き下げることを検討し始めた。『ロイター通信』によると、同国に参入済みの英JKXオイル&ガスは、税率引き下げはウクライナへの投資を支援するもので、とりわけ、ルデンキフスク天然ガス田にインパクトを与えるとの見解を示したという。2015年11月からロシアからの天然ガス購入を事実上停止しているウクライナは16年1月、国内ガス生産への課税率を55%から29%に引き下げる法案が議会で可決、成立した。
一方、ウクライナ国営のウクルトランガスと、ポーランド国営のガス-システムが、天然ガスを融通し合うことで強化を図るという。『LNGワールド・ニュース』などによると、ポーランドからウクライナへの天然ガス輸送量を現行の年間15億立方メートルから2020年に年間50億立方メートルまで増やす。天然ガスでロシア依存の大きいウクライナ、ポーランドの両大統領は昨年12月初旬、ロシア国営ガスプロムがウクライナを経由して欧州市場に天然ガスを供給する計画に反対の意を表明している。
このほか、ウクライナ国営ネフトガスは昨年12月半ば、同国を経由する天然ガス購入について、ウクライナ、ロシア、欧州委員会(EC)との三者協議をベルギーのブリュッセルで開催する見通しと伝えた。欧州は天然ガス需要の3分の1をロシアに依存し、その半分がウクライナ経由だ。現在、ウクライナは、ロシアから天然ガスを直接には購入していないことになっている。
ところで、ウクライナでいま注目を集めているのが、同国のオスタプ・セメラク環境相が昨年9月に表明した世界最大級の太陽光発電所プロジェクトだ。史上最悪の原発事故(1986年4月に発生)とされた旧ソ連時代のチェルノブイリ原子力発電所の跡地に建設するというユニークな構想だ。『AFP通信』によると、ウクライナ当局は、原発跡地(面積6,000ヘクタール)に太陽光パネルを敷き詰めれば、事故を起こした4号炉が稼働していた当時の発電量に匹敵する電力を生産できると試算。EBRDが支援に前向きな姿勢を示しているという。