バレンツ海における海域境界線の画定問題で、外交交渉によって当事国であるノルウェーとロシアが解決してから約6年。このほど、両国が関係強化で動き出した。同海域の国境付近における石油・天然ガス開発に向けた地震探査で、12月末にも契約締結するとの見通しだ。
11月28日、ロシアの天然資源・環境相とノルウェーの石油・エネルギー相が、オスロで会談した。11月29日付の『タス通信』などによると、バレンツ海の国境付近の地震探査で12月24日に契約を締結するという。両国はすでに過去の地震探査データの交換に関する契約を締結済みとしている。
バレンツ海の境界問題が動き出したのは、この海域に眠る石油・天然ガス資源の帰属問題に端を発する。バレンツ海は海域面積が17万6,000平方キロメートルとされ、石油・天然ガス埋蔵が豊富だ。米国地質調査所(USGS)は、北極圏の石油埋蔵量を900億トンと見積る。
2010年9月15日、両国はロシアのムルマンスクで、北極海域の国境線固定に関する条約を締結した。条約締結だけでなく、エネルギー資源開発で互いの協力推進で合意したことも併せて公表した。同年4月、ロシアのメドベージェフ大統領がノルウェーの首都オスロを訪問し、当地でノルウェーのストルテンベルグ首相(肩書はいずれも当時)と会談した。席上、係争海域の面積を均等に分けることで双方が一致。東西冷戦時代の1970年に領海交渉を開始してからほぼ40年の月日が経過していた。
バレンツ海域の国境線が確定したことを受けて、ノルウェー石油・エネルギー省は2014年に「バレンツ海共同探査プロジェクト」を立ち上げ、新規鉱区の公開にともない、同海域の南東部における探査に着手した。事業主体はノルウェーのスタットオイルで、英BP、米シェブロン、コノコフィリップスなど17の有力エネルギー企業が参加した。
ところが、その後、原油価格が急落。現在も低油価が続いたため、計画は大きく後退した。米エネルギー情報局(EIA)によると、ノルウェーの今年上半期における石油・天然ガス事業への投資額は、昨年上半期に比べ35億ドル減少。同国では2009年以降、投資額全体の12%が探査部門に、31%が生産部門に振り向けられていたが、今年前半の探査部門への投資額は前年同期比で50%減少したという。
投資拡大で一気に攻勢をかけたい両国だが、原油価格の下落、ウクライナ危機をめぐる欧米諸国とロシアとの関係悪化など、不安定な要因が重なり、双方の思惑どおりに進むかは楽観できないのが実情だ。