ベネズエラでは現在、経済停滞による社会的な混乱が広がっているという。こうした状況下、インドや中国の国営石油企業がベネズエラに支援の手を差し伸べている。ただ、こうしたサポートがどこまで奏功するか不透明との指摘もあり、今後の動向が注目される
ベネズエラ国営石油会社のPDVSAは11月4日、ベネズエラのデルタ・ペトロリアム(DP)とインド国営石油・天然ガス会社(ONGC)の2社から総額で14億5,000万ドルの融資を受けると発表した。DPは、ペトロデルタ(DPとPDVSAとの合弁企業)に11億3,000万ドルを融資して石油や天然ガスの増産を図るという。一方、ONGCは、PDVSAとの合弁企業に約3億ドルを融資し、サン・クリストバル油田で原油増産を目指すとしている。
他方、PDVSAは引き続き、中国企業との協力関係も強化する。PDVSAと中国石油天然ガス集団(CNPC)は11月17日、ベネズエラ産原油を日量ベースで22万7,000バレルを増産するため、22億ドル相当の投資契約を締結したと発表した。この案件には、両社が広東省掲陽市で予定する新設製油所(処理能力は日量40万バレル)の建設計画が含まれる。また、製油所のほか、原油の入荷ターミナルや石油製品の出荷ターミナル、貯蔵設備の建設も予定されているという。
ところで、一昨年来から続く原油価格の下落で、輸出の9割超を原油に依存するベネズエラ経済は瀕死の状態にある。債務不履行(デフォルト)に陥るとの観測が広がり、いまや、政情不安の高まりはピークに達している。PDVSAは2017年前半に社債償還を控えている。ベネズエラは約1,400億ドルの債務を抱えているとされ、原油価格の低迷が長引けば、経済全体が壊滅的な打撃を受ける。国際通貨基金(IMF)によると、2016年のベネズエラのインフレ率は475%、17年は1,660%にまで達すると予測する。
原油安に対応する経済政策に転換できなかったマドゥロ政権はもはや、原油価格の反転しか妙案はないとされ、無策を国内外に印象付けている。最近では、大統領罷免に向けた国民投票の署名集めが延期されたことで、大統領退陣を求める声が日に日に強まるなど、社会混乱に拍車がかかっているのが実情だ。