パナマ運河拡張工事が今年5月末に完了した。6月26日には当地で落成式が行われ、新運河を利用しての物資運搬が本格化した。拡張運河の開通で、米国産の液化天然ガス(LNG)のアジア向け航海日数が大幅に短縮されることになった。(写真はパナマ運河庁のニュース・リリースから引用)

米エネルギー情報局(EIA)は6月30日、拡張後のパナマ運河は積載ガス量39億立方フィートのLNG船が通行可能になり、世界の9割に及ぶLNG船が新運河を利用できるようになるとした。従来は、世界のLNG船の6%に相当する小型LNG船(7億立方フィート級)しか通過できなかったという。

メキシコ湾岸にあるLNGターミナルからパナマ運河経由で日本までかかる航海日数は20日間で、南アフリカの喜望峰経由の34日間、スエズ運河経由の31日間と比べ、大幅な短縮につながる。

また、南米チリへの航海日数はこれまでの20日間から8~9日間に、エクアドルやコロンビアの場合は25日間から5日間へと、大幅な短縮も可能になったとしている。

EIAはまた、6月23日付のレポートで、パナマ運河が拡張されたことで、ガソリン・ディーゼルタンカーの通航上限が、従来のパナマックス(積載量30~50万バレル)からネオパナマックス(同40~60万バレル)に拡大するのとの見方を示した。

その一方、大型原油タンカーのVLCC(載貨重量20万トン以上)やULCC(同30万トン以上)は、運河拡張後も通航できないとした。

EIAによると、2015年に拡張前のパナマ運河を通過した石油類タンカーは大西洋側から太平洋に抜けるルートが多く、ディーゼルが950万ロング(英)トン、ガソリンが910万ロング(英)トンだったという。

パナマ運河の開通は20世紀初めに遡る。拡張工事は当初、最初に完成した1914年から100年の節目にあたる2014年の完成を目指したが、工事規模の大きさから2年遅れとなった。総工費も工事の進捗に伴い、約32億ドルから53億ドルにまで膨らんだという。