今回から2回にわたり、世界の液化天然ガス(LNG)ビジネス事情について取り上げる。拡張工事を終え、6月末に開通予定の南米パナマ運河の動向や、ロシア国営ガスプロムが運営するバルト海でのLNGプロジェクト、豪州におけるLNG関連の動きを紹介する。(写真はバナマ運河庁のニュース・リリースから引用)

パナマ運河庁によると、拡張工事が完了したバナマ運河の落成式が6月26日に行われ、翌27日から通航が本格化する。一方、5月9日付のサイト『シップス・アンド・ポーツ(船舶&港湾)』によると、開通後にLNG船は年間300隻が利用できるようになるという。これは、世界のLNG貿易量の8%に相当し、積載量ベースで年間2,000万トンになるとされる。LNG船を含めた全船舶がパナマ運河を通過する積載量は2016年の3億3,360万トンから17年には3億8,900万トンになる見通しだ。航行する1日あたりの船舶数は34~36隻から30~31隻に減少する。これは、船舶の大型化によるとしている。

一方、英蘭系ロイヤル・ダッチ・シェルは、ガスプロムがバルト海レニングラード州ウスト・ルガ港に建設するバルチックLNGプロジェクトの権益20~30%を取得する方向で近く合意することが判明した。6月14日付のサイト『マリーン・リンク』などが報じた。このプロジェクトでは、LNGプラント2系列(トレイン)と天然ガスパイプライン(全長約360キロメートル)を建設する予定。LNG製造能力は年間2,000万トン、建設費用は160億ドル(ただし、この金額は2014年の発表時のもの)を見込む。

このほか、6月2日付のサイト『LNGワールド・シッピング』などによると、豪州クイーンズランド州における2016年1~3月のLNG総輸出量が380万トンとなり、ロシアの250万トンを上回った。マレーシアのコンサルティング会社「エナジー・クウェスト(EQ)」が集計したという。

EQによると、豪州全体で見ると、グラッドストーン(GLNG)やオーストラリア・パシフィック(APLNG)のフル稼働や、米シェブロン主体のゴーゴンLNGからの輸出開始を受けて、豪州のLNG生産量は前四半期比53.2%増の1,010万トンになったとした。