昨年後半に政権交代した南米アルゼンチン―中道右派のマウリシオ・マクリ大統領が12月に就任以来、クリスティーナ・フェルナンデス前政権がとり続けてきた反米左派路線を修正する動きが顕著となっている。エネルギー分野でもこのほど、米国企業がアルゼンチン国営YFPと同国のシェール共同探査で初期契約を締結したことが判明した。

現地からの報道によると、米エネルギー企業のアメリカン・エナジー・パートナーズ(AEP)は1月半ば、YFPとネウケン州ヴァカ・ムエルタのシェール開発で共同探査に乗り出す初期契約を締結したと発表。契約額は約5億ドルとし、期間は3年間だ。探査が順調に進めば、州営のエネルギー企業「ネウケン・オイル&ガス」などが合弁企業(JV)として参加する意向を示しているそうだ。

アルゼンチンの南端から東方へ約500キロメートル沖にある英国領フォークランド諸島(アルゼンチン名:マルビナス諸島)の領有権を巡り、アルゼンチン軍と英軍が軍事衝突した「フォークランド紛争」。紛争終結から34年近くが経過した現在、周辺海域で近年、英米企業が原油・ガス埋蔵を発見したことを契機に、再び緊張が高まっている。

2015年3月3日、アルゼンチンの中央銀行は、新紙幣50ペソ(約700円)を発行した。紙幣の図柄に「フォークランド諸島」を採用。英国はすかさず不快感を示した。他方、同年4月にはフェルナンデス大統領(当時)がロシアを訪問。ウラジミール・プーチン大統領とモスクワで会談し、エネルギー協力に向けた取り組みや、国防関係の格上げを目指す方向で一致。フォークランド諸島の領有権について、ロシア側からアルゼンチン支持を取り付けるなど、前政権によるロシア寄りの姿勢が鮮明となった。

これに対し、マクリ新政権はこのほど、100ペソ札、50ペソ札の図柄変更を行うと発表。愛国心を鼓舞するとされた50ペソ札の図柄について、現行の「フォークランド諸島」から「アンデスコンドル」(鳥類)に変更する方針だ。前政権はこれまで、経済・軍事面でロシアや中国寄りに傾斜してきたが、新政権はこの流れを米英寄りの路線に転換させようという印象が強い。ただ、急進的な改革は、米英と中露との新たな地政学リスクを生み出す危うさも内包している。