水素エネルギー開発をめぐる世界の動きが目立つ。米社が中国の研究所と水素補給の分野で提携したほか、米研究者が水素燃料電池を搭載する高速旅客船の建造が可能であるとの研究成果を公表するなどの情報が伝わっている。
米エア・プロダクツ&ケミカルズ(ペンシルバニア州)は10月13日、中国低炭素・クリーンエネルギー研究所(NICE)と、中国における水素補給プロジェクトを推進することに合意したと発表した。双方は、水素補給や低コスト水素製造、配送といった分野で覚書(MOU)を締結したという。エア・プロダクツは現在、米国をはじめ、世界20カ国で200件に及ぶ水素補給プロジェクトを手がけているという。
一方、米エネルギー省(DOE)が管轄するサンディア国立研究所の研究者が、米サンフランシスコ湾で水素燃料電池を搭載する高速旅客船を建造することが可能であるとの研究成果を明らかにした。それによると、高速旅客船は150人乗りで、最高速度は35ノット/時。総出力は4.92メガワット(MW)。交流式のモーターを使用し、燃料タンクは液体水素1,200キログラム。これは、50マイル航程2回分に相当するという。また、航行中の温室効果ガス(GHG)、有害物質排出量はゼロになるとしている。サンディアが10月6日、ニュース・リリースで発表した。
また、工業用ガス会社の米プラクスエア・サーフィス・テクノロジーズは10月4日、スペインの石油・天然ガス大手であるレプソルが、南米ペルーで操業するラ・パンピィラ製油所で水素プラントを稼働したと発表した。プラントの生産能力は日量1,200万立方フィートで、副次的に生産される二酸化炭素(CO2)から液化炭酸を製造するという。
このほか、ノルウェーで水素製造を手がけるネル・ハイドロ・ソリューションズは今夏、東欧ラトビアの水素プロジェクトから水素供給設備「H2ステーション」を受注した。設置場所はラトビアの首都リガで、自動車やバス向けに水素供給する。ネルは、水素貯蔵施設なども提供する予定で、受注額は150万ユーロ。2017年半ばに引き渡す予定としている。