イランが原油輸出に加え、天然ガス分野でも攻勢をかけている。周辺諸国を中心に天然ガスのパイプラインの建設構想が目白押しだ。最近、当地から伝わったニュースを取り上げる。

3月2日付のサイト『トレンド』などによると、イラン国会議長が欧州オーストリアの閣僚との会談で、ナブッコ西(NW)天然ガス・パイプライン建設をあらためて呼びかけたという。2013年6月28日、ガス田開発のコンソーシアムであるシャー・デニズは、欧州ルート向けのパイプライン建設計画でTAPを選定したと発表。当時、競合していた「ナブッコ」は落選の憂き目をみた。ナブッコは採算面でTAPに敗北したとの見方が一般的だったが、ここにきて再び脚光を浴びているようだ。

ナブッコ西は、アゼルバイジャンなどで産出する天然ガスをトルコ経由でパイプラインによってオーストリアに輸送する計画で、全長は約1,300キロメートル。欧米諸国などによる経済制裁の解除にともない、イランが再び欧州向けのガス油送管計画を提案した格好だ。オーストリアにとり、石油から天然ガスへの燃料転換を行ううえでメリットがあるとされる。

また、イラン国営ガス会社(NIGC)はこのほど、数カ月以内にイラクへ天然ガスの輸出を開始すると発表した。2月29日付のサイト『IRNA』などによると、イランはイラクへの天然ガス輸出量を日量400万立方メートルから開始し、その後、同3,500万立方メートルまで増やす計画という。

一方、インド国営ガス会社GAILと国営石油会社のIOCなどインド3社が、イランからインドへ天然ガスを輸送する海底パイプラインの建設計画で近く協議することが判明した。3月1日付のサイト『ザ・エコノミック・タイムズ』などが報じた。報道によると、このパイプラインはオマーン湾、アラビア海を経由してインドに達する全長1,400キロメートル。投資額は45億ドルを見込む。

このほか、イランとオマーンを結ぶ天然ガスの海底パイプライン事業化調査(FS)が、今年8月半ばにも終了する見通しであることが判明した。サイト『GDNオンライン』(2月29日付)などによると、本件で両国は本格的な価格交渉に入る予定という。投資額は600億ドルで、イランは日量2,000万立方メートルの天然ガスを25年間にわたりオマーンに供給するとしている。