英国の欧州連合(EU)残留・離脱を問う国民投票で「離脱派勝利」という結果が出た。リム情報開発は7月初旬、Brexit(英EU離脱)による原油相場に与える影響などについて、ニッセイ基礎研究所の上野剛志シニアエコノミスト(=写真)に聞いた。

―英国のEU離脱(Brexit)が決定したが、原油相場に与える影響は?

「下落材料だ。ブレグジット(Brexit)によって、これだけ不確実性が高まると、企業は投資や賃上げに踏み切れなくなる。それは欧州経済や、貿易によってつながる世界経済の下振れリスクになる。そうなると、原油の需要に不透明感が出て、買いづらくなるだろう」

「ブレグジット問題は恐らく、今後もたびたび緊迫化する。そのときには(外国為替市場で)ポンド、ユーロが売られ、ドルが買われることになる。ドル高発生の恐れもドル建て原油相場にとって下押し材料になるだろう」

―今後、Brexit は欧州全体にどう波及していくとみているか?

「ブレグジットで、拡大を続けてきたEUが初めて、縮小事例をつくることになる。これは各国の反EU派にとっては追い風。EU諸国でEU離脱を目指す動きは出てくると思う。今後注意したいのは、不正があったため再び実施されるオーストリアの大統領選で、反EU派が勝つかどうか。そこでまた反EU派が勢いづく可能性がある。また、英国内でも親EU派のスコットランドで、再び英国からの独立を問う住民投票が行われる可能性もある。こうした動きが出てくると、欧州の先行き不透明感がさらに強まり、マーケット全体がリスク回避的になる。それは原油価格にとって下押し材料だろう」

―年末にかけての原油(WTI)相場の見通しは?

「秋にかけて(WTI原油相場は)40ドル台前半まで調整して、年末にかけて持ち直してくるとみている。今年前半を振り返ってみると、原油価格が予想以上に急激に上昇した。大きな要因が需給の改善だった。クウェートでのストライキや、カナダでの山火事などによって、主要産油国の生産が大きく減少したことが効いた。ただ、今はクウェートのストの影響はなくなっているし、カナダの生産も回復に向かっている。秋にかけて需給の緩みが意識されやすくなるだろう」

「ただ、その後は供給過剰の解消に向かう。インドや中国など自動車の普及が進んでいる新興国のガソリン消費を牽引役に需要は回復していく。年末にかけては需給の引き締まりが再び意識されて、50ドルに向けて上がっていくとみている」。

㊟インタビューは7月5日に都内で実施した。