経済低迷に喘ぐ南米ベネズエラがこのほど、カリブ海の小国であるトリニダード・トバゴ(首都:ポート・オブ・スペイン、人口約134万人)とスワップ取引を開始した。ベネズエラが自国産の天然ガスをトリニダードに供給する一方、トリニダードはベネズエラに小麦粉などの食料品を提供するという。

6月23日付の英紙『ガーディアン』によると、トリニダードはこのほど、ベネズエラに計68万トン相当(ケチャップ、マヨネーズ、小麦粉、マーガリン、粉ミルク、スパゲティなど)の食料品を同国東部の3都市(クマナ、カルパノ、グイリア)に出荷したという。これに対し、ベネズエラはローラン・マナティー天然ガス田からガス供給を実施する。

ところで、今回のスワップ契約に先立ち、両国は昨年、エネルギー分野における協力関係の再構築に乗り出していた。ベネズエラは2015年2月末、トリニダード国営の製油所(精製能力は日量16万8,000バレル)向けに原油輸出を再開することを明らかにした。この製油所では、液化石油ガス(LPG)、ジェット燃料、ガソリン、ディーゼルなどを生産するという。

トリニダードは近年、アフリカ産原油の輸入が増加していたが、至近距離にあるベネズエラとの関係を強化することによって、エネルギー調達価格で優位性が生まれると判断したようだ。もともと両国は領土問題を抱え、必ずしも良好な関係とは言えず、トリニダードは、ベネズエラの優遇措置で原油を安く購入できる「ペトロカリブ・プロジェクト」の恩恵に浴していなかった。こうした状況下、ベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領とトリニダードのパサード・ビセッサー首相が昨年前半、両国間の海域で天然ガスを共同探査することでも合意した。

一昨年来の原油安で、国内経済が壊滅的なダメージを受けたベネズエラでは現在、国民が生活物資の調達にも事欠く状況にまで追い込まれている。マドゥロ大統領は今年5月、電力や食料品不足に加え、インフレ率が180%に達したとしてベネズエラ全土に「非常事態宣言」を発動した。トリニダードとのスワップ契約の締結は、厳しい国内事情を反映したもので、国民の不満を払拭する狙いがあるとされる。