テリーザ・メイ英首相は10月2日、英国が欧州連合(EU)からの離脱交渉を2017年3月末までに開始するとの見通しを示した。ところで、英国からの独立を模索するスコットランドでは、石油・天然ガス生産量が増加したほか、エジンバラ近郊のグランジマス石油化学プラントに米国産シェールガスが初めて荷揚げされるといった情報が伝わっている。
9月14日付のサイト『エクスプレス』などによると、スコットランド自治政府における2015~16会計年度の石油・天然ガス生産量が前年度比21.4%増の7,000万トン、売り上げは同23.5%減の176億ドルであったという。生産増加の要因は、近年に実施してきた設備投資が奏功したもようだ。ちなみに、過去最高となる設備投資額は195億ドル(2014年)だった。
一方、スイスの石化大手であるイネオスが、スコットランドのエジンバラ近郊に保有するグランジマス石化プラントの貯蔵施設に、米国産シェールガスが荷揚げされた。英BBCなどの報道によると、米国産シェールガスの輸入は、スコットランドのみならず、英国で初めてのこと。北海での天然ガス資源が枯渇するとされる中、イネオスは今般、オレフィンやポリマーの生産活動に支障が出ないようにするため、米国産エタンに注目したという。
シェール国内開発について、英政府がこれを後押しする反面、反対論が根強いのも事実だ。野党の労働党は、政権を奪還した場合、水圧破砕工法(フラクチャリング)を全面禁止する方針を示している。スコットランド自治政府も現在、フラクチャリングを全面的に禁止しているため、米国産シェールガスの輸入が今後、増加するとの見方も浮上している。
ところで、米エネルギー情報局(EIA)は9月22日、米国でエタンの輸出量が増加していると分析したレポートを公表した。米国産エタンは、カナダ向けにはパイプラインで輸送されるほか、メキシコ湾岸にモーガンズ・ポイント輸出基地(日量20万バレル)、ペンシルバニア州マーカスフックの輸出基地(日量3万5,000バレル)から海外向けに輸送されるという。今年3月、マーカスフックから輸出を開始した。今回の英国向けもここから輸出されたという。EIAは、天然ガスプラント液(NGPL)の生産量が、2016年5月の日量360万バレルから17年12月に日量400万バレルに増加すると予測しているが、このうち、200万バレル相当がエタンで占められる。