ロシアの東南アジア諸国連合(ASEAN)への進出が加速している。国営ロスネフチがインドネシアでの製油所プロジェクトに参画するほか、国営ガスプロムもベトナムに進出する。このほか、ノバテクもタイの炭化水素資源の開発に乗り出す。(写真はインドネシアを訪問したロスネフチのセチン会長、ニュースリリースから引用)

ロスネフチは5月16日、同社とインドネシアの国営プルタミナがトゥバン製油所プロジェクトで包括協定を締結すると発表した。この製油所の精製能力は日量30万バレルを見込み、投資額は120億ドルに上るという。2021年の完成を目指す。

一方、ガスプロムはベトナムに進出を図る。同社とペトロベトナムは5月17日、ベトナム沖の3鉱区で石油・天然ガスの探査や、天然ガス火力発電所の建設で覚書(MOU)を締結した。発電所の電源は、両社の合弁企業(JV)であるベトガスプロムが生産した天然ガスのほか、ガスプロムが供給する液化天然ガス(LNG)を使用するとしている。JVは2013年からベトナム沖で操業している。

このほか、ノバテクとタイのTPPは5月18日、炭化水素資源にかかわる共同探査に乗り出すとともに、LNGの供給に関する覚書(MOU)を締結したと発表した。

ロシア企業が東南アジア地域に進出を加速する背景には、ロシア政府の地域安全保障の関与が深いとの見方が出ている。ロシアのウラジミール・プーチン大統領は5月20日、東南アジア諸国連合(ASEAN)の首脳らと、同国南部の保養地であるソチで首脳会議を開催し、包括的な協力関係の構築を内外にアピールした。南シナ海をめぐる米中関係の緊張化にともない、ASEANを取り巻く政治的な環境がギクシャクし始める中、米中2国の間で埋没するロシアの地位を高めたいとする狙いがあるようだ。

ロシアでASEAN首脳会議が開催されるのは、今回が初めて。国際報道によると、フィリピンを除く9カ国の首脳がソチに参集したという。この機会に合わせ、ロシアを代表するエネルギー企業がASEANに進出するニュースが続けざまに伝わった。エネルギー安全保障の面からもASEAN諸国に食い込みたいとするロシアの思惑が見え隠れするようだ。