シェール開発で水圧破砕工法(フラクチャリング)を禁止しているフランスでこのほど、米国産シェールガス由来の液化天然ガス(LNG)輸入を禁止する法案提出の動きがあるという。同工法で生産されたフランス国外の天然ガスも対象に含めるということで、米国とLNG輸入契約をすでに締結した仏エネルギー関係者の間で波紋が広がっているようだ。(写真はロワイヤル氏、仏政府のニュースリリースから引用)
5月10日付のサイト『ザ・ヒル』などは、フランスのセゴレーヌ・ロワイヤル環境・エネルギー相が、米シェールガス田で生産されたLNG輸入について、これを法的に禁止する法案提出で検討に入ったと報じた。仏政府の論拠は、フランスでは2011年、エネルギー開発で水圧破砕工法の使用を禁止したため、国外とはいえ、この工法で生産した天然ガスの輸入も輸入禁止の対象とすべきというもの。仏エネルギー大手のエンジーなどは、米国とLNG輸入契約を締結済みで、この法案が可決、成立した場合、米国との契約が無効になるのでは、と当惑しているという。
米エネルギー情報局(EIA)によると、フランスのシェールガス(技術的な回収可能な)資源量は3兆9,000億立方メートルで、欧州諸国のなかでポーランドに次ぐ規模だ。欧州のエネルギー専門サイトによると、2011年6月、環境保護団体などが「水圧破砕は飲み水に使用する地下水を汚染する恐れがある」と指摘。これを受けて仏上院議会で、水圧破砕を禁止する法案が採択された。
仏トタルと米シュープバック・エナジーは、シェールガスが豊富に存在するとされるサウス・イースト盆地の探鉱ライセンスを取得していたが、シュープバックは期限内に水圧破砕以外の方法で行う計画書を提出できなかったため、2011年10月に仏政府によってライセンスを一方的に取り消された。他方、トタルはこれ以外の方法でシェールガス開発を進めるとの計画書を提出したものの、ライセンスを取り消された。
2012年9月、サルコジ前政権を引き継いだフランソワ・オランド大統領は、水圧破砕工法の禁止継続を表明した。オランド大統領は、任期中は水圧破砕法によるシェール開発を許可しないことを公言している。同大統領の任期は2017年までだ。
ところで、今回の法案提出の動きは、エネルギー開発企業にとって青天の霹靂(へきれき)だろう。仏政府の論法はさすがに無理があるとの見方も少なくないようだ。