今回は、ロシアにおけるエネルギー開発で中国との関係強化の動きを紹介する。

ロシアのノバク・エネルギー相は9月12日、両国首脳が「パワー・オブ・シベリア」天然ガスパイプラインの西方ルート経由で年間300億立方メートルの天然ガスをロシアから中国に輸出する方向で一致したと発表した。ロシアと中国はこれまで、同パイプラインの東方ルートの30年間にわたる天然ガス輸出(年間ベースで380億立方メートル)について、2019年末に開始する予定であることを表明済みだ。東西両ルートの稼働開始に漕ぎ付けるとみられている。

他方、ロシア国営石油会社のロスネフチは9月12日、中国石油天然ガス集団(CNPC)と、シベリア東部・西部の石油・天然ガスプロジェクトの県営の一部を売却することで合意したと発表した。ただ、売却対象となる鉱区名などは明らかにしていない。

また、ロシア国営のガスプロムネフチと中国国営のCNPCは9月12日、ロシアのヤマル-ネネツ自治管区にあるSutorminskoye油田の原油増進回収(EOR)の事業化調査(FS)に協力することで合意したことを明らかにした。ポリマー・界面活性剤の注入によるEORを予定しているという。ガスプロムネフチは、ヤマル-ネネツ自治管区でのEOR導入実績があるという。

ロシアはまた、原油・天然ガスに加え、石炭の輸出拡大にも乗り出す構えだ。プーチン大統領は8月末、国内企業による石炭の輸出量を増やし、輸出先を多様化することが求められるとした上で、供給先として中国を念頭に入れているとの考えを披露した。

ロシアと中国との相次ぐ関係強化には、米国と対立するロシアが、貿易紛争をめぐる米中関係の悪化で、ロシアと中国の対米報復の一環との見方が出ている。中国石油化工(SINOPEC)の子会社であるユニペックが、米国産原油の輸入を停止したと、海外メディアが報じた。8月6日付の『フィナンシャル・トリビューン』などによると、トランプ米政権が、中国からの輸入品への関税を引き上げたことに対する対抗措置とみられる。他方、中国財務部は8月初旬、米国からの輸入品にかかる追加関税の対象品目案に液化天然ガス(LNG)を含めるなど、米中貿易戦争は泥沼化の様相を呈している。